あなたと私と嘘と愛

「あなたに彼の何が分かるんですか?」

「分からないから聞いてるの。君はそれで疲れない?」

「疲れるとか疲れないとか意味が分からない。価値観の違いだと思います」

「…価値観、ねぇ…」


そこで優斗は押し黙った。
そしてやっぱりしらけた眼差しを向けてくる。
だから余計変な焦りを覚えた。
まるで追い詰められてるような、こんな感覚は久しぶり。


「あ、あなたと彼は違いますからっ」

「どんな風に?」


さぐるような眼差しを向けられて一瞬怯みそうになる。
どうしてそんなことまで聞いてくるのだろうと思ったが、この時、坂井さんの名誉を守らなきゃと、思いついた彼の良いころを口にした。


「彼はとにかく優しいし気が利くし、いつも私のこと気にかけてくれる。それにマメだし、私に対して嬉しい言葉を沢山くれて。それから笑顔も素敵だし、あなたみたいにそんな嫌味なことは言わない」


こうして比べてみると雲泥の差だ。
まだ数回しかデートはしたことがないけど、初対面でこうも印象が違うもんかと納得する。

私は優斗を批難するように睨む。
そもそも彼の悪口なんて聞きたくない。


「…それが本当ならずいぶんすごい人だね」

「そうです。彼は完璧な人ですから」


そして理想の人。
まさに私が思い描いていた人だ。

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