あなたと私と嘘と愛
怖い人、坂井さん
その日を境に私の優斗への冷たさはあからさまになった。
そして今まで以上に彼に会わないよう心がけた。
顔なんて見たくもない。
話しかけられても完全無視を通していた。
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「何かさ、亜香里の話を聞いてると思春期の娘と父親みたいだよね」
「やめてよ。あんな奴父親なんかじゃない。ただの同居人だから」
バイト終わり、真由に向かってしかめっ面を向ける。
場所はいつもの所。
真由のお母さんが経営する喫茶店でパフェを食べながらムッと顔を膨らませる。
ちなみに今のイチオシは苺をふんだんに使ったコロコロパフェだ。
寒い時期のアイスはまた一段と美味しく感じるのはどうしてだろう。
「けど、そう聞こえるのはなぜ?」
「知らないよ。あんなの家族とは認めない」
「…こりゃ相当キレてるねぇ…」
やれやれといった素振りが鼻につく。
だけど素知らぬ顔して苺をパクリ。
そしてテーブルの上の携帯がピコンと音をたてる。
着信の相手は坂井さんだ。
だからふわり顔が緩み、すぐに指先がそっちに向かう。