あなたと私と嘘と愛
そんな彼を見て今の状況を再確認する。
私は助けられたんだ。と分かった瞬間優斗に向かって声を上げようとした。
だけど私の体は優斗によって引き寄せられていて、今までにないほど距離が近い。
「前方不注意で事故るとか最悪だから。しかもながらスマホとか間抜けすぎ」
間近で見下ろされるとすごい迫力がある。
まるで美形の獣に捕らわれたような。
だから何も言えなくなってしまった。
「人の話し聞いてる?」
「…え…あ……」
放心状態の私に優斗は怪訝な顔を向けてくる。
私は金縛りにあったように動けなくなり。
少の間お互い見つめ合ったままだったけれど、すぐにそんな状況を優斗が変えた。
「…とりあえず行くよ」
「…え、あ……」
優斗が私の腕を一旦離し、今度は手を掴み直して歩きだす。
そこでやっと周りの状況が見えてきた。
(信号が赤から青に変わったんだ)
そう気付けた時、私は横断歩道をほぼ渡りきっていて、色んな意味で心臓がバクバクと波打った。
繋がれたままの手が異様に熱く汗ばんでいる。
「…あ、の……」
か細い声しかでなかったけど、「もう大丈夫」だと伝えようとした。
なのに優斗は前を向いたまま歩みを止めようとはしない。