あなたと私と嘘と愛
(聞こえなかったのかな?)
内心焦りを覚えたが、私は咄嗟に腕を引きもう少し大きな声を上げた。
「…もう大丈夫ですっ」
やっと普通に声が出た。
そこで優斗の方の勢いもピタリ止まる。
ハッとしたように立ち止まり、ようやく私の方へと振り返る。
「自分で歩けます。車は来ません」
「………」
さっきまでの苛立った様子は消えていた。
その代わり少し困惑した表情が伺える。
やっぱり心臓が騒がしい中、優斗が真剣な顔付きで声を出す。
「本当、見てる方がひやひやする。まじで勘弁して」
「………」
「聞いてる?」
「……聞いて、ます。すみません。気を付けます」
ここまで怒られるとは思わなかった。
だからどんな顔をしていいか分からずふて腐れた言い方になってしまった。
今のは私が悪い。悪いんだけど。
無性に気まずいため、すぐに顔を反らしてしまった私の態度はきっと最悪だろう。
けどそんな中、ふと冷静さを取り戻すと妙な疑問が沸いてくる。
「でも…、どうしてここに?」
偶然居合わせたのだろうか?
たまたま帰りが一緒になったのかもしれないと思った時、優斗の方からその答えは簡単に落とされる。