あなたと私と嘘と愛
「ずっと同じ電車だったからね」
「え?」
「しかも同じ車両…」
少し疲れきってるような表情が私を見下ろした。
その瞬間繋がれた手は離れ、手の平の温かさがすぅっと解放される。
「君は携帯に夢中でまったく気付いてなかったからね。周りを見る余裕がない様子だったから」
嫌味な台詞が私を貫いた。
そして動揺も起こさせる。
そんなに前から?と驚いたが、聞くと優斗は私が乗る2駅前から電車に乗っていたのだという。
次の作品公開の為、監督さんとかと打ち合わせした帰りだったみたいで、ちょうど私と同じタイミングになったみたいだ。
だとしても酷い。
ずっと黙って見てたなんて…
「だったら声ぐらいかけてくれてもよかったじゃないですか」
「どうせ話しかけても無視されると思ってね」
「………」
それを言われたらぐうの音も出ない。
今までの私の態度を思い返せば優斗の言葉は間違ってない。
だから私は黙り込み、前を歩く優斗の後ろをとぼとぼと微妙な空気で着いていく。