あなたと私と嘘と愛

気まずい…

非常な気まずさを感じたまま、戸惑う視線を周りの景色に向ける。

自宅のマンションまでもう目と鼻の先だ。
途中近所の公園の前を通りがかるとクリスマスに向けてちょっとしたイルミネーションが装飾されている。

毎年夜になるときらびやかな原色に囲まれてけっこう綺麗なのが特徴だ。


(もうすぐクリスマスだもんねぇ)

そんなことを思いつつ、優斗の背中に視線を戻す。


(やっぱり母と過ごすのだろうか?)

過ごすよね。新婚だもん。
けどこうしてまじまじ彼の姿を観察すると、坂井さんよりもまた少し背が高いように思う。

顔だって憎らしいほど整っている。
母の好きそうなタイプだね。


そして不思議なことに落ち着きが戻ると少し申し訳なさが生まれてきた。
嫌味な奴だけど、助けてもらったことには変わりない。私を心配してくれたんだ。

だからやっぱり「ありがとう」ぐらいは伝えるべき?
だけど今さら言うタイミングが分からない。

(このままボソッと呟いてみようか?)

マンションのエントランスに入り、エレベーターを待つ。
降りてきたエレベーターに乗り込むと、2人しかいない空間に異様な静けさが訪れた。

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