初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
 アレクサンドラからの手紙を受け取ったアントニウスは、手紙の内容を見てそれがアレクサンドラ自身によって書かれたものだと確信した。
 うまくカモフラージュしてあるが、今まで女性としてあったことのないアレクサンドラが、これからは女性として過ごすつもりであり、アントニウスからの申し出を受け、社交界デビューの身支度を整え、それに備える決意が手紙から伝わったきた。
 本当ならば、愛の溢れる手紙を送り返したいところだが、女性であるアレクサンドラとは微妙な駆け引きを始めてしまったこともあり、アントニウスは愛を語るよりも、一流の仕立て屋を既に手配したこと、そしてロベルトだけではなく、自分も常にアレクサンドラの傍にあり、アレクサンドラを護ることだけを書き記し、最後の締めに『想いのすべてをこめて』と控えめにして返事を返した。

☆☆☆

< 100 / 252 >

この作品をシェア

pagetop