初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
「アレク!」
アレクサンドラの姿を見つけたジャスティーヌに声をかけられ、アレクサンドラはジャスティーヌに歩み寄った。
「お別れを済ませて来たよ」
アレクサンドラが言うと、ロベルトが不思議そうな顔をした。
「どこかへ行くのか?」
「いえ、実家に帰るんです。叔父のところに、長くお世話になりすぎましたから」
アレクサンドラの言葉に、ロベルトが驚いてアレクサンドラの事を見つめた。
「もうすぐアレクサンドラ嬢も正式にデビューするというのに、王都を去るというのか?」
「はい。そうです」
「アントニウスは随分アレクシスを気に入っていたと思ったが、止めないのか?」
「確か、父君がご病気だとか、そうでしたね?」
アントニウスのフォローにアレクサンドラは頷いた。
「そうです。なので、大人しく家に戻ります」
「そうか、じゃあ、お父様のご健康を祈ろう」
ロベルトは言うと、アレクサンドラに微笑みかけた。
大人げないと言えば大人げないが、アントニウスはロベルトが微笑みかけたのが気に入らず、すぐに割り込んだ。
「アレクシス、都を離れる前に、別れの一杯を交わそう」
アントニウスに促され、アレクサンドラはアントニウスと共にサロンに戻った。
「アレクサンドラ嬢のデビューを祝して。それから、アレクシス、君の旅立ちに」
「あなたとの出会いに」
アレクサンドラは、半ばやけくそになりながら乾杯した。
「こうして、あなたの素晴らしい飲みっぷりを見ることができるのも、今晩が最後ですか」
「ええ。そうです。今晩を限りに、エイゼンシュタインの社交界からアレクシスは姿を消します」
「名残惜しい気もしますが、私は、やはり、アレクサンドラ嬢と過ごす甘い時間の方が楽しみだ」
アントニウスはグラスの中のブランデーをくゆらせた。
「あなたには、楽しみでしょうね。誰も触れたことのないアレクサンドラ嬢を難なくその手に入れようというのですから、笑みも止まらないでしょう」
「そんななに簡単に行くかどうか、怪しい物ですがね」
アントニウスは言うと、ブランデーを飲み干した。
二人は再びホールに戻り、ジャスティーヌとロベルトに合流した。
「ああ、アレクシス。いまジャスティーヌと話していたのだが、今夜は私がジャスティーヌを送っていく。だから、君は一人で帰ってもらいたい」
「わかりました」
アレクサンドラは、大人しく賛成した。
「アレク、ごめんなさい。私、踊り疲れてしまって」
「いいよ、ジャスティーヌ。殿下が送ってくださるなら、安心だから」
アレクサンドラに見送られ、ジャスティーヌはロベルトに付き添われて会場を後にした。
二人を見送った後、しばらくアントニウスとアレクサンドラは舞踏会で楽しむ人々を見つめていたが、夜も更けて来たのでそれぞれ別の馬車に乗って会場を後にした。
☆☆☆
アレクサンドラの姿を見つけたジャスティーヌに声をかけられ、アレクサンドラはジャスティーヌに歩み寄った。
「お別れを済ませて来たよ」
アレクサンドラが言うと、ロベルトが不思議そうな顔をした。
「どこかへ行くのか?」
「いえ、実家に帰るんです。叔父のところに、長くお世話になりすぎましたから」
アレクサンドラの言葉に、ロベルトが驚いてアレクサンドラの事を見つめた。
「もうすぐアレクサンドラ嬢も正式にデビューするというのに、王都を去るというのか?」
「はい。そうです」
「アントニウスは随分アレクシスを気に入っていたと思ったが、止めないのか?」
「確か、父君がご病気だとか、そうでしたね?」
アントニウスのフォローにアレクサンドラは頷いた。
「そうです。なので、大人しく家に戻ります」
「そうか、じゃあ、お父様のご健康を祈ろう」
ロベルトは言うと、アレクサンドラに微笑みかけた。
大人げないと言えば大人げないが、アントニウスはロベルトが微笑みかけたのが気に入らず、すぐに割り込んだ。
「アレクシス、都を離れる前に、別れの一杯を交わそう」
アントニウスに促され、アレクサンドラはアントニウスと共にサロンに戻った。
「アレクサンドラ嬢のデビューを祝して。それから、アレクシス、君の旅立ちに」
「あなたとの出会いに」
アレクサンドラは、半ばやけくそになりながら乾杯した。
「こうして、あなたの素晴らしい飲みっぷりを見ることができるのも、今晩が最後ですか」
「ええ。そうです。今晩を限りに、エイゼンシュタインの社交界からアレクシスは姿を消します」
「名残惜しい気もしますが、私は、やはり、アレクサンドラ嬢と過ごす甘い時間の方が楽しみだ」
アントニウスはグラスの中のブランデーをくゆらせた。
「あなたには、楽しみでしょうね。誰も触れたことのないアレクサンドラ嬢を難なくその手に入れようというのですから、笑みも止まらないでしょう」
「そんななに簡単に行くかどうか、怪しい物ですがね」
アントニウスは言うと、ブランデーを飲み干した。
二人は再びホールに戻り、ジャスティーヌとロベルトに合流した。
「ああ、アレクシス。いまジャスティーヌと話していたのだが、今夜は私がジャスティーヌを送っていく。だから、君は一人で帰ってもらいたい」
「わかりました」
アレクサンドラは、大人しく賛成した。
「アレク、ごめんなさい。私、踊り疲れてしまって」
「いいよ、ジャスティーヌ。殿下が送ってくださるなら、安心だから」
アレクサンドラに見送られ、ジャスティーヌはロベルトに付き添われて会場を後にした。
二人を見送った後、しばらくアントニウスとアレクサンドラは舞踏会で楽しむ人々を見つめていたが、夜も更けて来たのでそれぞれ別の馬車に乗って会場を後にした。
☆☆☆