初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
屋敷に戻ると、ジャスティーヌが迎えに出てくれ、アレクサンドラはぎゅっとジャスティーヌを抱きしめた。
「ごくろうさま、アレク。これで、短いけど長かった一人二役もお互いにお終いね。明日からは、アレクも淑女よ」
「なんか、そっちの方がすごく気が重いんだけど、気のせいかな・・・・・・」
アレクサンドラは言うと、ジャスティーヌと共に自分の部屋に戻った。
ぽんぽんと服を脱ぎ、普段用のドレスに着替えると、気持ちはアレクシスからアレクサンドラに自然と変わっていった。
お気に入りの銀の刺しゅう入りのベストも、真っ白なトラウザーズも、もう穿くことはないと思うと、すごく寂しい気もしたが、感傷に浸っている時間はない。それに、アレクサンドラ自身、自分がレディに変わりつつあることを自分でも気づいていた。
この間までは恥ずかしさを感じなかったトラウザーズ姿で男性とグラスを酌み交わす間も、誰かに自分の下半身を見られているのではないかと言う、変な不安に襲われたし、女性がいない事には不安は感じなかったが、サロンにいる間、ジャスティーヌの姿が見えないことにはすごく不安を感じた。今まで、そんなことは一度もなかったのに、やはり自分は男じゃなく女だったのだと、自分でも最近は何かにつけてそう感じるようになってきていた。
最初は苦しかったコルセットも、かなり緩く結んでもらっていることもあり、毎日着て過ごすこともできるようになった。ヒールのある靴も、重心がぶれずに歩けるようにもなった。それでも、長年体に染みついた男性のステップだけが大きな問題た。それ以外は、なんとなく、ごまかせるようになったが、未だにジャスティーヌと同じサイズにまでコルセットを絞ることはできない。たぶん、同じサイズに絞れるようになるのは、数年先だろうと、正直アレクサンドラは思っていた。
「アントニウス様は何ですって?」
突然アントニウスの話を振られ、アレクサンドラはドキリとした。
「ああ、なんか、ダンスの練習を手伝ってくれるって」
「えっ、それって、まずいんじゃない?」
てっきり賛成してくれるものだとアレクサンドラ思っていたのに、意外にもジャスティーヌは懸念を示した。
「だって、お父様のお話では、まだ半分は男性ステップを踊ってしまうんでしよう。それなのに、アントニウス様と踊ったら、アレクがアレクシスだって、バレてしまうんじゃないの?」
既にアントニウスに秘密を知られているアレクサンドラとしては、別に気にもしていなかったが、秘密を知られている事を知らないジャスティーヌからすれば、アントニウスの前でアレクサンドラがステップを間違えれば、大事になると考えるのは当然だった。
「だから、そうじゃなくてね、お父様が相手だと気を抜いてしまうから、アントニウス様が相手なら、ずっと気を引き締めていられるじゃない。そうしたら、ステップも間違わないかなって、そう思ったの。それに、ステップを間違いそうになったら、すぐに倒れ掛かって、ごまかすから大丈夫!」
アレクサンドラが言うと、ジャスティーヌは素直に納得した。
「確かに、練習を始めてから、踊るのはお父様とばかりですものね。アレクの言うのももっともだわ。秘密が知れる心配とか、不安と言う精神的な緊張がないのだから、油断してしまうのも同然だわね」
ジャスティーヌは言うと、立派なレディになりつつあるアレクサンドラに微笑みかけた。
「もうすぐアレクサンドラも、もっとコルセットをきつく絞れるようになると思うわ。だから、そうしたら、きっと、ぐーんとレディ度がアップすると思うわ」
ジャスティーヌの励ましに、アレクサンドラは微笑み返した。
「ジャスティーヌ、ありがとう」
「これからも、頑張りましょうね」
ジャスティーヌの言葉に、アレクサンドラはお礼を言うと、大きく伸びをした。
「おやすみなさい、アレク」
ジャスティーヌは言うと、自分の部屋に戻っていった。
「おやすみなさい、ジャスティーヌ」
アレクサンドラは、ジャスティーヌの背を見送った。
「ごくろうさま、アレク。これで、短いけど長かった一人二役もお互いにお終いね。明日からは、アレクも淑女よ」
「なんか、そっちの方がすごく気が重いんだけど、気のせいかな・・・・・・」
アレクサンドラは言うと、ジャスティーヌと共に自分の部屋に戻った。
ぽんぽんと服を脱ぎ、普段用のドレスに着替えると、気持ちはアレクシスからアレクサンドラに自然と変わっていった。
お気に入りの銀の刺しゅう入りのベストも、真っ白なトラウザーズも、もう穿くことはないと思うと、すごく寂しい気もしたが、感傷に浸っている時間はない。それに、アレクサンドラ自身、自分がレディに変わりつつあることを自分でも気づいていた。
この間までは恥ずかしさを感じなかったトラウザーズ姿で男性とグラスを酌み交わす間も、誰かに自分の下半身を見られているのではないかと言う、変な不安に襲われたし、女性がいない事には不安は感じなかったが、サロンにいる間、ジャスティーヌの姿が見えないことにはすごく不安を感じた。今まで、そんなことは一度もなかったのに、やはり自分は男じゃなく女だったのだと、自分でも最近は何かにつけてそう感じるようになってきていた。
最初は苦しかったコルセットも、かなり緩く結んでもらっていることもあり、毎日着て過ごすこともできるようになった。ヒールのある靴も、重心がぶれずに歩けるようにもなった。それでも、長年体に染みついた男性のステップだけが大きな問題た。それ以外は、なんとなく、ごまかせるようになったが、未だにジャスティーヌと同じサイズにまでコルセットを絞ることはできない。たぶん、同じサイズに絞れるようになるのは、数年先だろうと、正直アレクサンドラは思っていた。
「アントニウス様は何ですって?」
突然アントニウスの話を振られ、アレクサンドラはドキリとした。
「ああ、なんか、ダンスの練習を手伝ってくれるって」
「えっ、それって、まずいんじゃない?」
てっきり賛成してくれるものだとアレクサンドラ思っていたのに、意外にもジャスティーヌは懸念を示した。
「だって、お父様のお話では、まだ半分は男性ステップを踊ってしまうんでしよう。それなのに、アントニウス様と踊ったら、アレクがアレクシスだって、バレてしまうんじゃないの?」
既にアントニウスに秘密を知られているアレクサンドラとしては、別に気にもしていなかったが、秘密を知られている事を知らないジャスティーヌからすれば、アントニウスの前でアレクサンドラがステップを間違えれば、大事になると考えるのは当然だった。
「だから、そうじゃなくてね、お父様が相手だと気を抜いてしまうから、アントニウス様が相手なら、ずっと気を引き締めていられるじゃない。そうしたら、ステップも間違わないかなって、そう思ったの。それに、ステップを間違いそうになったら、すぐに倒れ掛かって、ごまかすから大丈夫!」
アレクサンドラが言うと、ジャスティーヌは素直に納得した。
「確かに、練習を始めてから、踊るのはお父様とばかりですものね。アレクの言うのももっともだわ。秘密が知れる心配とか、不安と言う精神的な緊張がないのだから、油断してしまうのも同然だわね」
ジャスティーヌは言うと、立派なレディになりつつあるアレクサンドラに微笑みかけた。
「もうすぐアレクサンドラも、もっとコルセットをきつく絞れるようになると思うわ。だから、そうしたら、きっと、ぐーんとレディ度がアップすると思うわ」
ジャスティーヌの励ましに、アレクサンドラは微笑み返した。
「ジャスティーヌ、ありがとう」
「これからも、頑張りましょうね」
ジャスティーヌの言葉に、アレクサンドラはお礼を言うと、大きく伸びをした。
「おやすみなさい、アレク」
ジャスティーヌは言うと、自分の部屋に戻っていった。
「おやすみなさい、ジャスティーヌ」
アレクサンドラは、ジャスティーヌの背を見送った。