初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
 馬車が止まり、御者が扉を開けステップを固定する。
 エスコート役のロベルトが馬車を降り、ジャスティーヌを抱き抱えるようにして支えて馬車から降ろした後、お供のアレクシスが後に続いた。
 今回のロベルトとアレクサンドラの見合い話は既に社交界一の話題で、既に舞踏会の催されている広間でも皆が口々にその話しを囁き合っていた。
 ロベルト到着に、ランバール公爵夫妻が出迎えに訪れ、ジャスティーヌは深く膝を折って挨拶する。ランバール公爵は、祖父が国王に当たる公爵家の中でも一、二を争う由緒正しい血筋の家柄で、弱小貴族であるアーチボルト伯爵家の娘であるジャスティーヌから声をかけることができない雲の上のような格上貴族に当たる。そのため、公爵か公爵夫人が声をかけてくれるまで、深々とお辞儀をして待つほかない。
「ようこそランバール公爵邸へ」
 ロベルトとの挨拶が終わり、ロベルトから紹介を受けたジャスティーヌに、公爵夫人が声をかけてくれた。
「この度は、お招きにあずかり、恐悦至極にございます」
 ジャスティーヌとしては面識があるが、アレクサンドラとしては初対面なので、ジャスティーヌは礼を失しないように注意深く頭を上げた。
「そのように固くなる必要はない。今宵は殿下と二人、存分に楽しんで行かれるがよい」
 公爵からの言葉に、ジャスティーヌはもう一度深くお辞儀をする。
 二人の後ろにアレクシスが居るのに気付くと、公爵夫人は嬉しそうにアレクシスに声をかけ、公爵に案内されたロベルトとジャスティーヌだけが広間へと先に進むことになった。 
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