初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
「アレクサンドラ!」
闇の向こう、はるか上空から懐かしいアレクサンドラの声が聞こえるような気がして、アントニウスは必死にアレクサンドラの名を呼んだ。
ここのところ、気が付けばずっとアレクサンドラの声が聞こえてくるような気がした。
「アレクサンドラ!」
アントニウスは声が枯れるほど必死にアレクサンドラの名を呼んだ。
次の瞬間、温かい感触を手に感じ、次にアントニウスは温かい手の感触を額と頬に感じた。
(・・・・・・・・温かい、この手はアレクサンドラの手だ。私はどこにいる? あれは、あれはただの夢じゃない。ここにいる限り、アレクサンドラを手に入れることはできない。ここから出なくては・・・・・・・・)
案と丹生は闇の中で必死にもがいた。見えない現実のこの幻想の世界を区切る扉を探すように。
再び、温かい手が触れ、アントニウスは渾身の力を振り絞ってその温かい手を握り締めた。
『アントニウス様?』
闇の向こうから、驚いたようなアレクサンドラの声が聞こえた。
どうやって、最前線の戦場から、アレクサンドラのいるエイゼンシュタインまでやってきたのかはわからないが、少なくとも、手を握り返した瞬間に聞こえたアレクサンドラの声は夢ではないと、アントニウスはもう一度、その手を握った。
『間違いではありません。アントニウス様が、私の手を握り返してくださいました』
驚きと喜びに満ちたアレクサンドラの声に、アントニウスは確信を得た。
(・・・・・・・・この闇を越えた向こうに、本当の世界が、アレクサンドラの待っている世界がある。絶対に、アレクサンドラのものに帰らなくてはいけない・・・・・・・・)
考えているアントニウスの耳に複数の声が聞こえ、中にはエイゼンシュタインの言葉ではなく、馴染み親しんだアントニウスの母国語であるイルデランザの言葉も聞こえた。
『アントニウス様、どうか、どうか目を開けてくださいませ』
アレクサンドラの言葉とともに、眩しい光が目の前に広がって行った。
あまりにも眩しくて、アントニウスは光から逃げようと顔をそむけたが、すぐに思い直して光の方に顔を向けた。
『アントニウス様』
柔らかく温かいものが手の甲に触れ、アントニウスは見なくてもそれがアレクサンドラの柔らかい頬だとわかった。
「アレクサンドラ!」
必死に声を出してその名を呼んでも、声は出ず、口だけが無音で動いた。
(・・・・・・・・声が出ないのなら、目を明かなくてはいけない。闇に包まれているんじゃない位、私が目を閉じていたから闇の中にいるように感じたのだ。だから、目を開けなくては・・・・・・・・)
眩しい光で、目を開けた途端に瞳が焼けてしまうのではないかと不安になる程光は強かったが、アントニウスは全身の力を瞼に集中させ、ゆっくりと少しずつ瞼を押し開けて光の向こうを見つめた。
あまりに光が眩し過ぎて、視力を失ってしまうのではないかと思うくらい激しい痛みを目に感じたが、アントニウスは必死に瞼を開こうとした。
☆☆☆
闇の向こう、はるか上空から懐かしいアレクサンドラの声が聞こえるような気がして、アントニウスは必死にアレクサンドラの名を呼んだ。
ここのところ、気が付けばずっとアレクサンドラの声が聞こえてくるような気がした。
「アレクサンドラ!」
アントニウスは声が枯れるほど必死にアレクサンドラの名を呼んだ。
次の瞬間、温かい感触を手に感じ、次にアントニウスは温かい手の感触を額と頬に感じた。
(・・・・・・・・温かい、この手はアレクサンドラの手だ。私はどこにいる? あれは、あれはただの夢じゃない。ここにいる限り、アレクサンドラを手に入れることはできない。ここから出なくては・・・・・・・・)
案と丹生は闇の中で必死にもがいた。見えない現実のこの幻想の世界を区切る扉を探すように。
再び、温かい手が触れ、アントニウスは渾身の力を振り絞ってその温かい手を握り締めた。
『アントニウス様?』
闇の向こうから、驚いたようなアレクサンドラの声が聞こえた。
どうやって、最前線の戦場から、アレクサンドラのいるエイゼンシュタインまでやってきたのかはわからないが、少なくとも、手を握り返した瞬間に聞こえたアレクサンドラの声は夢ではないと、アントニウスはもう一度、その手を握った。
『間違いではありません。アントニウス様が、私の手を握り返してくださいました』
驚きと喜びに満ちたアレクサンドラの声に、アントニウスは確信を得た。
(・・・・・・・・この闇を越えた向こうに、本当の世界が、アレクサンドラの待っている世界がある。絶対に、アレクサンドラのものに帰らなくてはいけない・・・・・・・・)
考えているアントニウスの耳に複数の声が聞こえ、中にはエイゼンシュタインの言葉ではなく、馴染み親しんだアントニウスの母国語であるイルデランザの言葉も聞こえた。
『アントニウス様、どうか、どうか目を開けてくださいませ』
アレクサンドラの言葉とともに、眩しい光が目の前に広がって行った。
あまりにも眩しくて、アントニウスは光から逃げようと顔をそむけたが、すぐに思い直して光の方に顔を向けた。
『アントニウス様』
柔らかく温かいものが手の甲に触れ、アントニウスは見なくてもそれがアレクサンドラの柔らかい頬だとわかった。
「アレクサンドラ!」
必死に声を出してその名を呼んでも、声は出ず、口だけが無音で動いた。
(・・・・・・・・声が出ないのなら、目を明かなくてはいけない。闇に包まれているんじゃない位、私が目を閉じていたから闇の中にいるように感じたのだ。だから、目を開けなくては・・・・・・・・)
眩しい光で、目を開けた途端に瞳が焼けてしまうのではないかと不安になる程光は強かったが、アントニウスは全身の力を瞼に集中させ、ゆっくりと少しずつ瞼を押し開けて光の向こうを見つめた。
あまりに光が眩し過ぎて、視力を失ってしまうのではないかと思うくらい激しい痛みを目に感じたが、アントニウスは必死に瞼を開こうとした。
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