初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
着替えを済まし、まだ涙を零しているジャスティーヌがベッドに入り、上体を起こして座っていると、同じく着替えを済ませたアレクサンドラが戻ってきた。
ネグリジェ姿のジャスティーヌに対して、アレクサンドラの男装は徹底していてネグリジェではなくパジャマを着ていた。
勢いよく、ボスンとベッドに飛び乗るとパジャマ姿の身軽さを充分に発揮してアレクサンドラはジャスティーヌの元に這い寄った。
「お待たせ」
いつ見ても、その姿は堂々と夜這いをかけているようで、ライラは溜め息を隠せなかった。
「ねえ、ジャスティーヌ、私を信じて。教えて、いったい何があったの?」
優しくアレクサンドラに問われても、ジャスティーヌは恥ずかしくて頭を横に振るばかりで、四阿での出来事を口にすることが出来なかった。
いくら相手が王太子で、陛下からの指名を受けてのお相手だったとは言え、未婚の娘が手を引かれるまま、舞踏会の会場から離れた庭の奥、親しい親族や家人しか知らない場所にある四阿に着いていったことは、恥じるべきことではあっても、そこで起こったことで相手を責めることは出来ないと、ジャスティーヌは思っていた。
(・・・・・・・・きっと殿下は、導かれるままに従って四阿に行った私のことを尻軽で浅はかな女だと思われたに違いない。だとしたら、私は、アレクサンドラの淑女としての名誉を辱めてしまったんだわ・・・・・・・・)
考えるだけで、次から次へと大粒の涙が溢れては零れて行った。
もはやジャスティーヌを苛むのは、自分の軽率な行動であって、長年慕い続けてきたロベルト王子から受けた破廉恥な行為ではなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、アレク。私の軽率な行動のせいで、あなたの名前が穢されてしまったわ」
ジャスティーヌは言うと、再び泣き崩れた。
「あー、えっと、ライラ。二人っきりにして。それから、お父様とお母様にも、私がいいと言うまで、絶対にこの部屋には入ってこないようにと伝えて」
アレクサンドラの指示に、ライラは『かしこまりました』と、一言答え部屋から出ていった。
「ねえ、ジャスティーヌ。話しが全然見えないんだけど、ちゃんと順序立てて教えて」
アレクサンドラは、言いながらジャスティーヌの肩を抱き寄せた。しかし、ジャスティーヌはアレクサンドラを拒むようにして言った。
「ダメよ。私が穢した名前を背負って生きるのは、貴方ではなく私でなくては。だから、今日から私がアレクサンドラよ。そして、あなたはジャスティーヌとして好きに生きるべきだわ」
体を二つに折るようにして泣き続けるジャスティーヌに、アレクサンドラはかける言葉が見つからなかった。しかし、アレクサンドラがジャスティーヌとして生きるという事は、アレクサンドラが王太子妃になるというのよりも、もっと非現実的な事だった。
これが、ジャスティーヌはジャスティーヌとして、アレクサンドラはアレクシスとして自由に生きていいというのであれば、話は別だ。しかし、確かにジャスティーヌは自分がアレクサンドラになり、アレクサンドラにジャスティーヌになれと言った。それでは、この結婚話が持ち上がった最初にアレクサンドラが提案した事と何も変わらない。
「あのね、ジャスティーヌ、それがダメだからジャスティーヌが一人二役してアレクサンドラは殿下に嫌われ、ジャスティーヌは好かれる。そう言う計画だったよね?」
再確認するようにアレクサンドラは言った。
「だって、私は、とんでもないことを・・・・・・」
「だから、そのとんでもないことをちゃんと教えて欲しいんだってば」
もどかしそうにアレクサンドラが問いかけた。
しかし、ジャスティーヌは両手で顔を覆い謝るだけだった。
「ジャスティーヌ、落ち着いて。私は、どんな時でもジャスティーヌの味方だから。ね、だから、話してみて」
アレクサンドラに優しく背中をさすられ、ジャスティーヌはぽつりぽつりと何が起こったかを説明し始めた。
ジャスティーヌの話を聞いたアレクサンドラは、ボスンと言う音をたてて並べられた枕にパンチを決めた。
それを自分に対する怒りだと勘違いしたジャスティーヌが両手で顔を覆った。
「ごめんなさいアレク」
「違うよジャスティーヌ、悪いのはあの色情魔だから」
アレクサンドラは敬意も払わずに言い切った。
「いいね。もし、ジャスティーヌとして逢っている時にそんな事したら、ほっぺたに手の跡が付くくらいガッツリ殴るんだよ」
アレクサンドラは言うと、ジャスティーヌの両手を自分の両手で包むようにして握った。
「今日は、隣に付いていてあげるよ」
アレクサンドラは何もなかったように言うと、ジャスティーヌのベッドに滑り込んだ。
それから、ベッドサイドの呼び鈴を引いてライラを呼ぶと、蜂蜜とブランデー入りのホットミルクを二つ頼んだ。
二人は運ばれてきたホットミルクを飲み干してから眠りについた。
ネグリジェ姿のジャスティーヌに対して、アレクサンドラの男装は徹底していてネグリジェではなくパジャマを着ていた。
勢いよく、ボスンとベッドに飛び乗るとパジャマ姿の身軽さを充分に発揮してアレクサンドラはジャスティーヌの元に這い寄った。
「お待たせ」
いつ見ても、その姿は堂々と夜這いをかけているようで、ライラは溜め息を隠せなかった。
「ねえ、ジャスティーヌ、私を信じて。教えて、いったい何があったの?」
優しくアレクサンドラに問われても、ジャスティーヌは恥ずかしくて頭を横に振るばかりで、四阿での出来事を口にすることが出来なかった。
いくら相手が王太子で、陛下からの指名を受けてのお相手だったとは言え、未婚の娘が手を引かれるまま、舞踏会の会場から離れた庭の奥、親しい親族や家人しか知らない場所にある四阿に着いていったことは、恥じるべきことではあっても、そこで起こったことで相手を責めることは出来ないと、ジャスティーヌは思っていた。
(・・・・・・・・きっと殿下は、導かれるままに従って四阿に行った私のことを尻軽で浅はかな女だと思われたに違いない。だとしたら、私は、アレクサンドラの淑女としての名誉を辱めてしまったんだわ・・・・・・・・)
考えるだけで、次から次へと大粒の涙が溢れては零れて行った。
もはやジャスティーヌを苛むのは、自分の軽率な行動であって、長年慕い続けてきたロベルト王子から受けた破廉恥な行為ではなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、アレク。私の軽率な行動のせいで、あなたの名前が穢されてしまったわ」
ジャスティーヌは言うと、再び泣き崩れた。
「あー、えっと、ライラ。二人っきりにして。それから、お父様とお母様にも、私がいいと言うまで、絶対にこの部屋には入ってこないようにと伝えて」
アレクサンドラの指示に、ライラは『かしこまりました』と、一言答え部屋から出ていった。
「ねえ、ジャスティーヌ。話しが全然見えないんだけど、ちゃんと順序立てて教えて」
アレクサンドラは、言いながらジャスティーヌの肩を抱き寄せた。しかし、ジャスティーヌはアレクサンドラを拒むようにして言った。
「ダメよ。私が穢した名前を背負って生きるのは、貴方ではなく私でなくては。だから、今日から私がアレクサンドラよ。そして、あなたはジャスティーヌとして好きに生きるべきだわ」
体を二つに折るようにして泣き続けるジャスティーヌに、アレクサンドラはかける言葉が見つからなかった。しかし、アレクサンドラがジャスティーヌとして生きるという事は、アレクサンドラが王太子妃になるというのよりも、もっと非現実的な事だった。
これが、ジャスティーヌはジャスティーヌとして、アレクサンドラはアレクシスとして自由に生きていいというのであれば、話は別だ。しかし、確かにジャスティーヌは自分がアレクサンドラになり、アレクサンドラにジャスティーヌになれと言った。それでは、この結婚話が持ち上がった最初にアレクサンドラが提案した事と何も変わらない。
「あのね、ジャスティーヌ、それがダメだからジャスティーヌが一人二役してアレクサンドラは殿下に嫌われ、ジャスティーヌは好かれる。そう言う計画だったよね?」
再確認するようにアレクサンドラは言った。
「だって、私は、とんでもないことを・・・・・・」
「だから、そのとんでもないことをちゃんと教えて欲しいんだってば」
もどかしそうにアレクサンドラが問いかけた。
しかし、ジャスティーヌは両手で顔を覆い謝るだけだった。
「ジャスティーヌ、落ち着いて。私は、どんな時でもジャスティーヌの味方だから。ね、だから、話してみて」
アレクサンドラに優しく背中をさすられ、ジャスティーヌはぽつりぽつりと何が起こったかを説明し始めた。
ジャスティーヌの話を聞いたアレクサンドラは、ボスンと言う音をたてて並べられた枕にパンチを決めた。
それを自分に対する怒りだと勘違いしたジャスティーヌが両手で顔を覆った。
「ごめんなさいアレク」
「違うよジャスティーヌ、悪いのはあの色情魔だから」
アレクサンドラは敬意も払わずに言い切った。
「いいね。もし、ジャスティーヌとして逢っている時にそんな事したら、ほっぺたに手の跡が付くくらいガッツリ殴るんだよ」
アレクサンドラは言うと、ジャスティーヌの両手を自分の両手で包むようにして握った。
「今日は、隣に付いていてあげるよ」
アレクサンドラは何もなかったように言うと、ジャスティーヌのベッドに滑り込んだ。
それから、ベッドサイドの呼び鈴を引いてライラを呼ぶと、蜂蜜とブランデー入りのホットミルクを二つ頼んだ。
二人は運ばれてきたホットミルクを飲み干してから眠りについた。