初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
 ロベルトの馬車ではなく、公爵家の馬車で一人帰ってきたジャスティーヌに、アーチボルト伯爵は頭を抱えた。
 どうして娘二人は普通にエスコートしてくれたロベルト王子に送って貰うことなく使いを寄越して迎えに求めたり、公爵家の馬車で送り届けられてくるのかと。
 第一、娘二人と言っても、実際にどちらの舞踏会に参加したのも、ジャスティーヌ一人だ。
 前回は、すすり泣いて帰ってきたが、今回は泣き崩れて目を真っ赤に泣きはらしての帰宅だった。
「ジャスティーヌ?」
 問いかけても、前回同様、ジャスティーヌは父から逃げるように階段を駆け上がって姿を消した。
 詳しく説明を求めてもアレクサンドラはジャスティーヌが貞操の危機に遭って泣いているの一点張りで、具体的にどんな事をされたのか迄は説明してくれない。それは、もしかすると、男勝りとは言え、一応レディであるアレクサンドラの口から話せないような破廉恥な仕打ちを受けたのかもしれないと、不安は感じた物のアレクサンドラとロベルト王子の仲の悪さは社交界で知らぬ物が居ないほどでもあったので、親を心配させて破談に持ち込もうというアレクサンドラの計画ではと思うことにしていた。
 しかし、ジャスティーヌの泣きはらした姿を目にしたアーチボルト伯爵は、自分が間違っていたのではと、改めて不安になった。

☆☆☆

< 34 / 252 >

この作品をシェア

pagetop