初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
帰宅したジャスティーヌは、先日とは違い、自室に戻るとすぐに高価なドレスを脱いでライラに片付けさせた。そして、アレクサンドラがパジャマ姿で部屋に現れるなり、アレクサンドラの手をしっかりと握ってベッドに腰かけた。
「聞いてアレク、あなたに決断してほしいの」
その真剣なまなざしに、アレクサンドラは不吉なものを感じた。
「殿下は、結婚相手をあなたに決めるつもりよ」
ジャスティーヌの言葉に、アレクサンドラはこの場合の『あなた』は自分ではなく、ジャスティーヌということになるのではないかと思いながらも、ジャスティーヌが次の言葉を継ぐのを待った。
「髪の毛を伸ばして殿下に嫁ぐか、それとも、私として領地内の修道院に入るか、道は二つに一つよ」
「ちょっと待ってジャスティーヌ。なんか話がおかしくない? 僕が修道院に入るのはわかるけど、なんでジャスティーヌとして修道院に入るの?」
「そうしたら、私の髪の毛を切って、当分の間、あなたの髪が短いことが分からないように、結い上げスタイルの鬄を作ってもらうわ」
ジャスティーヌの言葉に、アレクサンドラはギョッとした。
「その美しい髪を切るっていうの! 冗談でしょ! ジャスティーヌは、僕が本物の男だったら、絶対にお嫁さんに迎えたい女性ナンバーワンなんだよ。それをなんで、あのボンクラ殿下の為に切る必要があるのさ!」
「違うわ、アレク。殿下の為に切るんじゃなくて、あなたの為に切るのよ」
ジャスティーヌは、怖いくらいに落ち着いていた。
「ていうか、私は殿下に嫌われて、選ばれない計画だよね?」
「それが、殿下はもう、あなたに心を決めているのよ」
アレクサンドラは不敬だと思いはしたが、殿下が自分に惚れているという言葉に、鳥肌が立ち吐き気をもよおした。
「だから、アレクが髪の毛を伸ばすか、私の代わりに修道院に入る必要があるの」
「いや、そこがわからない。ジャスティーヌとして、普通に暮らす選択はないの?」
アレクサンドラの問いに、ジャスティーヌは目を伏せた。
「私は、殿下に純潔を疑われている身なの」
ジャスティーヌの告白に、アレクサンドラのパンチがベッドの天蓋を支える四本の柱の一本に炸裂した。
「殺してやる。もう、殿下だろうが誰だろうが構うもんか、僕が明日の朝、決闘を申し込んでて天国に送ってやる。二度と、そんな戯言を口にできないように」
抑えようとしても、ふつふつと怒りが沸き上がり、アレクサンドラは立ち上がると、思わずベッドサイドのティー・テーブルを蹴り飛ばした。
激しい音と共に、テーブルの天板が足と泣き別れ、その上に置かれていたジャスティーヌお気に入りのカップとソーサーが床の絨毯の上に放り出された。
「落ち着いて、アレク。本当は、あなたも知っていたのでしょう?」
「なにを!」
「私とアレクシスが深い中で、私は既に行き遅れているだけではなく、レディとしてあるまじき欠陥、つまり純潔ではないと、噂されている事を・・・・・・」
「そんな、バカな! ジャスティーヌには心に決めた殿方がいるのかとは質問されても、ジャスティーヌに限って、そんなふしだらな噂、耳にしたこともない! 第一、そんな噂が立っていたら、国王陛下が見合い相手にジャスティーヌを選ぶはずもないし、それに、そんな噂が父上のお耳に入ったら、僕は即刻、修道院おくりだよ!」
激しい音と怒声に、驚いた両親がジャスティーヌの寝室に飛び込んできた。
「いったい、何があったというの?」
母に問われ、ジャスティーヌは全てを離そうとしたがアレクサンドラがジャスティーヌの代わりに口を開いた。
「ご心配なく。ちょっと、あの色ボケ殿下に腹を立てただけです」
「アレクサンドラ、王太子殿下に敬意を払いなさい。あなたの婚約者になるかもしれないのですよ」
母の言葉に、アレクサンドラが頭を横に振る。
「いいですか、はっきり言っておきます。ジャスティーヌが僕の身代わりに殿下に嫁ぐのが嫌だというのであれば、僕が殿下と結婚します。ただし、僕は初夜の晩に自決します。あの男がこの体にふれるなんて、虫唾がはしります。ジャスティーヌが僕の身代わりに殿下に嫁ぐのであれば、僕はいつだって修道院に入ります。それから、殿下がジャスティーヌを選んだら、僕はその後の身の振り方をそのあとで考えます。以上です!」
目を血走らせ、爪が刺さりそうな程ぎゅっと手を握ったまま拳を振り回すアレクサンドラに、父の伯爵は頭を抱えて部屋を出て行き、かける言葉も見つからない母のアリシアもまた、一言もなく部屋から出て行った。
「いい、ジャスティーヌ。そんな噂話、嘘だからね。実際には、誰もそんな事話してない。騙されちゃだめだよ、あの根性悪のへそ曲がり王子に、いいね!」
何度も念を押され、ジャスティーヌはしぶしぶ頷いた。
☆☆☆
「聞いてアレク、あなたに決断してほしいの」
その真剣なまなざしに、アレクサンドラは不吉なものを感じた。
「殿下は、結婚相手をあなたに決めるつもりよ」
ジャスティーヌの言葉に、アレクサンドラはこの場合の『あなた』は自分ではなく、ジャスティーヌということになるのではないかと思いながらも、ジャスティーヌが次の言葉を継ぐのを待った。
「髪の毛を伸ばして殿下に嫁ぐか、それとも、私として領地内の修道院に入るか、道は二つに一つよ」
「ちょっと待ってジャスティーヌ。なんか話がおかしくない? 僕が修道院に入るのはわかるけど、なんでジャスティーヌとして修道院に入るの?」
「そうしたら、私の髪の毛を切って、当分の間、あなたの髪が短いことが分からないように、結い上げスタイルの鬄を作ってもらうわ」
ジャスティーヌの言葉に、アレクサンドラはギョッとした。
「その美しい髪を切るっていうの! 冗談でしょ! ジャスティーヌは、僕が本物の男だったら、絶対にお嫁さんに迎えたい女性ナンバーワンなんだよ。それをなんで、あのボンクラ殿下の為に切る必要があるのさ!」
「違うわ、アレク。殿下の為に切るんじゃなくて、あなたの為に切るのよ」
ジャスティーヌは、怖いくらいに落ち着いていた。
「ていうか、私は殿下に嫌われて、選ばれない計画だよね?」
「それが、殿下はもう、あなたに心を決めているのよ」
アレクサンドラは不敬だと思いはしたが、殿下が自分に惚れているという言葉に、鳥肌が立ち吐き気をもよおした。
「だから、アレクが髪の毛を伸ばすか、私の代わりに修道院に入る必要があるの」
「いや、そこがわからない。ジャスティーヌとして、普通に暮らす選択はないの?」
アレクサンドラの問いに、ジャスティーヌは目を伏せた。
「私は、殿下に純潔を疑われている身なの」
ジャスティーヌの告白に、アレクサンドラのパンチがベッドの天蓋を支える四本の柱の一本に炸裂した。
「殺してやる。もう、殿下だろうが誰だろうが構うもんか、僕が明日の朝、決闘を申し込んでて天国に送ってやる。二度と、そんな戯言を口にできないように」
抑えようとしても、ふつふつと怒りが沸き上がり、アレクサンドラは立ち上がると、思わずベッドサイドのティー・テーブルを蹴り飛ばした。
激しい音と共に、テーブルの天板が足と泣き別れ、その上に置かれていたジャスティーヌお気に入りのカップとソーサーが床の絨毯の上に放り出された。
「落ち着いて、アレク。本当は、あなたも知っていたのでしょう?」
「なにを!」
「私とアレクシスが深い中で、私は既に行き遅れているだけではなく、レディとしてあるまじき欠陥、つまり純潔ではないと、噂されている事を・・・・・・」
「そんな、バカな! ジャスティーヌには心に決めた殿方がいるのかとは質問されても、ジャスティーヌに限って、そんなふしだらな噂、耳にしたこともない! 第一、そんな噂が立っていたら、国王陛下が見合い相手にジャスティーヌを選ぶはずもないし、それに、そんな噂が父上のお耳に入ったら、僕は即刻、修道院おくりだよ!」
激しい音と怒声に、驚いた両親がジャスティーヌの寝室に飛び込んできた。
「いったい、何があったというの?」
母に問われ、ジャスティーヌは全てを離そうとしたがアレクサンドラがジャスティーヌの代わりに口を開いた。
「ご心配なく。ちょっと、あの色ボケ殿下に腹を立てただけです」
「アレクサンドラ、王太子殿下に敬意を払いなさい。あなたの婚約者になるかもしれないのですよ」
母の言葉に、アレクサンドラが頭を横に振る。
「いいですか、はっきり言っておきます。ジャスティーヌが僕の身代わりに殿下に嫁ぐのが嫌だというのであれば、僕が殿下と結婚します。ただし、僕は初夜の晩に自決します。あの男がこの体にふれるなんて、虫唾がはしります。ジャスティーヌが僕の身代わりに殿下に嫁ぐのであれば、僕はいつだって修道院に入ります。それから、殿下がジャスティーヌを選んだら、僕はその後の身の振り方をそのあとで考えます。以上です!」
目を血走らせ、爪が刺さりそうな程ぎゅっと手を握ったまま拳を振り回すアレクサンドラに、父の伯爵は頭を抱えて部屋を出て行き、かける言葉も見つからない母のアリシアもまた、一言もなく部屋から出て行った。
「いい、ジャスティーヌ。そんな噂話、嘘だからね。実際には、誰もそんな事話してない。騙されちゃだめだよ、あの根性悪のへそ曲がり王子に、いいね!」
何度も念を押され、ジャスティーヌはしぶしぶ頷いた。
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