初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
怒りに任せ、人気のない場所にアレクサンドラを一人置き去りにしてしまったことを後悔していたアントニウスは、何曲目かのワルツを蝶のように華麗に踊るジャスティーヌの姿にアレクサンドラの姿を重ね、ここは意地を張るべきではないとばかりに、慌ててアレクサンドラを迎えに行った。
しかし、噴水の近くまで進むと、アレクサンドラが誰かと話しているの声がかすかに聞こえた。
茂みから覗くと、アレクサンドラが乙女の肩を抱き寄せていた。
「ああ、アレクシス、これから私はどうしたらいいの・・・・・・」
レディの嘆きの声が風に流されて聞こえ、アントニウスの目の前でレディは泣き崩れるとアレクサンドラの足の上に伏し、その背をアレクサンドラが愛おしそうになでているのが見えた。
(・・・・・・・・この私というものがありながら・・・・・・・・)
アントニウスの怒りと嫉妬の炎が再び燃え上がった。
身をひるがえそうとした瞬間、上着が茂みに引っ掛かり、ガサリという音を立てた。
「誰かそこに?」
男というには、あまりにも細いアレクサンドラの声が誰何した。
それと同時に、レディがアレクサンドラにすがるようにしてその腕に自分の腕を絡めた。
「お邪魔してしまったようで申し訳ない」
アントニウスが答えると、レディが息を飲むのが見えた。
「ロザリンド、ここは僕に任せて、あなたは舞踏会にもどりなさい」
アレクサンドラは言うと、サイドの通路の方にロザリンドを押しやった。
「さすがに、紳士なんだねアレクシス」
アントニウスは言うと、ゆっくりとアレクサンドラに歩み寄った。
既に、ロザリンドの気配は周りから消えていた。
「ロザリンドには何のかかわりもないことです。僕は、相談を受けていただけですから」
「そうかい? 私の目には、とても仲睦まじく見えたが?」
「誤解です。彼女は、友人のジェームズの恋人です」
「ほう、ということは、二人して、君を愛しているってことか」
「見当違いもほどほどにしてください」
アレクサンドラは言うと、立ち上がって屋敷の方へ戻ろうとした。
「待ちたまえ、アレクシス」
呼び止められ、アレクサンドラはアントニウスに向きなおった。
「僕たちのゲームをもっと楽しくする方法を考えたんだが」
「チェスだろうと、どんなゲームだろうと、公爵家の嫡男であるあなたに僕が勝てるはずないんですよ。僕は、きちんと分をわきまえていますから」
「では、君が負けたら僕の勝ち、つまり、僕は皆に話して回るというルールにしたらどうかな?」
アントニウスの言葉に、アレクサンドラが唇を噛みしめた。
「その癖は止めた方がいいと、先日も言ったはずだ」
「あなたがルールを変えるなら、僕はそれに従うだけです」
答えたアレクサンドラの肩をアントニウスがグイっと抱き寄せ、アレクサンドラの耳元に唇を寄せた。
「この僕を篭絡して見せたまえ。この僕が、死んでも君の秘密を話したいと思わなくなるほど君に夢中になるように。・・・・・・さて、このゲーム、君に勝ち目はあるかな?」
女性ならば、何人も口説き落としてきた経験のあるアレクサンドラにとって、絶体絶命ともいえるルール変更だった。
同じ女性を口説いて勝って見せろと言われてもおじけづかないアレクサンドラだったが、男であるアントニウスを篭絡する方法など、想像すらつかなかった。
「では、とりあえず戻ろうか。ジャスティーヌ嬢に心配をかけてはいけないからね」
アントニウスに促されるまま、アレクサンドラは重い足を引きずるようにして広間へと戻っていった。
しかし、噴水の近くまで進むと、アレクサンドラが誰かと話しているの声がかすかに聞こえた。
茂みから覗くと、アレクサンドラが乙女の肩を抱き寄せていた。
「ああ、アレクシス、これから私はどうしたらいいの・・・・・・」
レディの嘆きの声が風に流されて聞こえ、アントニウスの目の前でレディは泣き崩れるとアレクサンドラの足の上に伏し、その背をアレクサンドラが愛おしそうになでているのが見えた。
(・・・・・・・・この私というものがありながら・・・・・・・・)
アントニウスの怒りと嫉妬の炎が再び燃え上がった。
身をひるがえそうとした瞬間、上着が茂みに引っ掛かり、ガサリという音を立てた。
「誰かそこに?」
男というには、あまりにも細いアレクサンドラの声が誰何した。
それと同時に、レディがアレクサンドラにすがるようにしてその腕に自分の腕を絡めた。
「お邪魔してしまったようで申し訳ない」
アントニウスが答えると、レディが息を飲むのが見えた。
「ロザリンド、ここは僕に任せて、あなたは舞踏会にもどりなさい」
アレクサンドラは言うと、サイドの通路の方にロザリンドを押しやった。
「さすがに、紳士なんだねアレクシス」
アントニウスは言うと、ゆっくりとアレクサンドラに歩み寄った。
既に、ロザリンドの気配は周りから消えていた。
「ロザリンドには何のかかわりもないことです。僕は、相談を受けていただけですから」
「そうかい? 私の目には、とても仲睦まじく見えたが?」
「誤解です。彼女は、友人のジェームズの恋人です」
「ほう、ということは、二人して、君を愛しているってことか」
「見当違いもほどほどにしてください」
アレクサンドラは言うと、立ち上がって屋敷の方へ戻ろうとした。
「待ちたまえ、アレクシス」
呼び止められ、アレクサンドラはアントニウスに向きなおった。
「僕たちのゲームをもっと楽しくする方法を考えたんだが」
「チェスだろうと、どんなゲームだろうと、公爵家の嫡男であるあなたに僕が勝てるはずないんですよ。僕は、きちんと分をわきまえていますから」
「では、君が負けたら僕の勝ち、つまり、僕は皆に話して回るというルールにしたらどうかな?」
アントニウスの言葉に、アレクサンドラが唇を噛みしめた。
「その癖は止めた方がいいと、先日も言ったはずだ」
「あなたがルールを変えるなら、僕はそれに従うだけです」
答えたアレクサンドラの肩をアントニウスがグイっと抱き寄せ、アレクサンドラの耳元に唇を寄せた。
「この僕を篭絡して見せたまえ。この僕が、死んでも君の秘密を話したいと思わなくなるほど君に夢中になるように。・・・・・・さて、このゲーム、君に勝ち目はあるかな?」
女性ならば、何人も口説き落としてきた経験のあるアレクサンドラにとって、絶体絶命ともいえるルール変更だった。
同じ女性を口説いて勝って見せろと言われてもおじけづかないアレクサンドラだったが、男であるアントニウスを篭絡する方法など、想像すらつかなかった。
「では、とりあえず戻ろうか。ジャスティーヌ嬢に心配をかけてはいけないからね」
アントニウスに促されるまま、アレクサンドラは重い足を引きずるようにして広間へと戻っていった。