初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
王宮で手篤い看護を受け、何とか屋敷に戻ったルドルフは、事の顛末を妻のアリシアに説明した。
ジャスティーヌが王太子妃になることが事実上決定事項であることは嬉しい知らせだったが、よりにもよってアントニウスがジャスティーヌが演じていたアレクサンドラにご執心で、陛下自らアレクサンドラとアントニウスの仲を応援するという話は、今度はアリシアを気絶させることになった。
ブランデーで意識を取り戻したアリシアは、取りあえずアレクサンドラの話を聞くべく、ルドルフの書斎にアレクサンドラだけを呼び出した。
父の口から、アントニウスとの交際に関する決定事項を聞かされたアレクサンドラは、余りにも素早いアントニウスの行動を苦々しく思ったものの、届いたばかりの手紙の内容も、贈られてきた美しいバラの花束も、秘密が漏洩したのではと言う疑念を両親に持たせるものではなかった。
「つまり、その、お前とアントニウス殿との関係は・・・・・・」
「シンプルですよ、父上。カードをして、お酒を飲んで、遠乗りをする。所謂、貴族の子息同士の付き合いです」
実のところ、アレクシスは貴族の嫡男ではなく、あくまでもアーチボルト伯爵家の遠縁筋の生まれで、強いて言うならせいぜいがアッパー・ミドルクラスの出身という事になっている。
「僕は、田舎に帰ることにします」
アレクサンドラは、諦めたように言った。
「しかし、ドレスを用意したとして、立ち居振る舞いはどうする?」
父の問いに、アレクサンドラは顔をひきつらせながら笑って見せた。
「死ぬ気で頑張るしかないですよ。僕の為に父上がして下さった事で、伯爵家を危機にさらすわけにはいきませんから」
アレクサンドラの答えに、アリシアがガックリと肩を落とした。
「立ち居振る舞いだけではありませんよ。言葉遣いもです」
「あ、そうか、これからは僕じゃなく私で、父上じゃなくお父様っていわないといけないのか」
「それを言うなら、言わないといけないのですねですよ、アレクサンドラ」
「あーめんどくさい!」
「それもダメです」
アレクサンドラは、次の言葉を見つけられず、取りあえず口をつぐんだ。
「立ち居振る舞い、言葉遣いはジャスティーヌに任せる他はないだろう」
「そうですわね」
アリシアが納得すると、ルドルフは執事を呼び、ジャスティーヌを連れてくるように命じた。
ジャスティーヌが王太子妃になることが事実上決定事項であることは嬉しい知らせだったが、よりにもよってアントニウスがジャスティーヌが演じていたアレクサンドラにご執心で、陛下自らアレクサンドラとアントニウスの仲を応援するという話は、今度はアリシアを気絶させることになった。
ブランデーで意識を取り戻したアリシアは、取りあえずアレクサンドラの話を聞くべく、ルドルフの書斎にアレクサンドラだけを呼び出した。
父の口から、アントニウスとの交際に関する決定事項を聞かされたアレクサンドラは、余りにも素早いアントニウスの行動を苦々しく思ったものの、届いたばかりの手紙の内容も、贈られてきた美しいバラの花束も、秘密が漏洩したのではと言う疑念を両親に持たせるものではなかった。
「つまり、その、お前とアントニウス殿との関係は・・・・・・」
「シンプルですよ、父上。カードをして、お酒を飲んで、遠乗りをする。所謂、貴族の子息同士の付き合いです」
実のところ、アレクシスは貴族の嫡男ではなく、あくまでもアーチボルト伯爵家の遠縁筋の生まれで、強いて言うならせいぜいがアッパー・ミドルクラスの出身という事になっている。
「僕は、田舎に帰ることにします」
アレクサンドラは、諦めたように言った。
「しかし、ドレスを用意したとして、立ち居振る舞いはどうする?」
父の問いに、アレクサンドラは顔をひきつらせながら笑って見せた。
「死ぬ気で頑張るしかないですよ。僕の為に父上がして下さった事で、伯爵家を危機にさらすわけにはいきませんから」
アレクサンドラの答えに、アリシアがガックリと肩を落とした。
「立ち居振る舞いだけではありませんよ。言葉遣いもです」
「あ、そうか、これからは僕じゃなく私で、父上じゃなくお父様っていわないといけないのか」
「それを言うなら、言わないといけないのですねですよ、アレクサンドラ」
「あーめんどくさい!」
「それもダメです」
アレクサンドラは、次の言葉を見つけられず、取りあえず口をつぐんだ。
「立ち居振る舞い、言葉遣いはジャスティーヌに任せる他はないだろう」
「そうですわね」
アリシアが納得すると、ルドルフは執事を呼び、ジャスティーヌを連れてくるように命じた。