タイムマシンはいらない。
愛しい朝
薄暗いショットバー。カウンターの隅に座り、私は三杯目のカクテルを注文する。
行きつけというわけではなく、たまたま仕事帰りにふらりと立ち寄って。雰囲気のいいお店だな、気に入ったら通おうかな、なんて思っていたけれど、この店はダメだ。
だって、周りはカップルばっかり。
照明が暗いからって、人目を気にしないでイチャイチャと。大学生かな。それとも付き合いたて?
羨ましいとは思わず、若いなと思ってる時点で、私はきっとおばさんなんだろう。
ああ、なんだか胸焼けがしてきた。
それでも酔えなくて、気持ちよくなれなくて、四杯目はアルコール度数が高いストレートのウォッカを水のように一気に流し込んだ。
こうやってお酒の力を借りないと眠れなくなったのは、二か月前。
三年間付き合っていた彼氏に、あっさりと捨てられたのが原因だ。
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