タイムマシンはいらない。
『そっか、じゃあね』と聞き分けがいいふりをして。物分かりがいいふりをして。
怒り狂う姿も見せずに、二か月経った今、私はこうして強いお酒を飲みながら悲しみに浸ってる。
たぶん、私のこういうところがダメだったんじゃないかな。
同い年の彼だったけれど、私のほうが年上みたいになんでも決めて、弱音をはくのはいつも彼のほうで。私は大丈夫だよと、力強い言葉で励まして、頼りにするより、頼りにされていた。
私なら、ひとりでも生きていけると思われたのかもしれない。
俺がいなくても私なら大丈夫だって、思われたのかもしれない。
だから、きっと彼が選んだのは、弱い人。
守ってあげなきゃって。俺がいなきゃダメなんだって、責任感が芽生えるような、そんな人に違いない。
私がいなくちゃ、なにもできなかったくせに。
片付けも靴下の置き場所も、あれどこ、これどこって、いつも私に聞かなきゃなにも分からなかったくせに……。
不器用だったのに、浮気は器用にしてたなんて、本当に呆れて笑っちゃう。