銀光のbreath 【番外編 追加完了】
「まま、ここ、こうえんー?」

「違うよー。パパのとこだよ?」

「ぱぱ?」

「そう。パパに、『ちはるは元気だよー』ってお話しにいくの」

ダークグレイの三つ揃いを着た征一郎さんに、軽々と抱っこされたちはるが、分かってないんだろうけど無邪気に笑う。

メモリアルパークは広くて緑も多いし、子供の目線だと遊び場なんだろう。
桜の通り道があって天気も好いし、花見には絶好の場所だけど。ここに静かに眠ってる人達を起こしちゃうのは、忍びないしね。

お父さんお母さん達や洋秋達とは、現地集合で。
あたし達はヤマトの運転で、征一郎さんと少し早めに到着してた。

「おーちゃん、こっちー」

せいいちろう、の『ろう』辺りの母音が変換されちゃったのか、ちはるは舌っ足らずに自分の伯父さんを『おーちゃん』て呼ぶ。
ワイルドなイケメン顔を崩しまくって、ちまっこい姪っ子に手を引かれながらメロメロな征一郎さん見てると、櫻秀会の裏幹部とは思えないくらいだよねぇ、由弦。

二人の姿にほっこりしながら。・・・相変わらず、抉られるような胸の痛みも憶えるあたし。
あんな風にメロメロだったのは、本当はあんただったハズなのにね・・・・・・。

「姉さん」

隣を歩くヤマトが空いてる手を強く握ってきたから、横顔を振り仰いだ。
黒ずくめの男が同じように、前を歩くちはると征一郎さんの姿を追って。目を細める。

「オレは姉さんとちーから離れる気なんか、ないよ。兄貴の代わりになれんのはオレしかいない。組と姉さんのために生きたい。兄貴が果たせなかった分、オレがそうする」

立ち止まったヤマトにつられて、あたしの足も止まる。

「それがオレの幸せで、生きがいなんだからさ。ジャマする権利は姉さんにはナイからね」

ふっと大人びた笑いを浮かべてヤマトは。力強くそう言い切った。


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