銀光のbreath 【番外編 追加完了】
湿っぽいのは由弦もキライだろうから。
頃合いを見計らって、あたしが真っ先に明るく声をかける。

「ちはるー、パパに『またね』して、廉も、おいしいの食べに行こっかー?」

『いくー!』

無邪気なキッズの声が重なると、それまで充満してた悼む空気も和んで、みんなの顔に笑顔が戻った。

孫と仲良く手を繋いで歩き出した、喪服姿のお父さん達を目で追いかけながら。

「洋秋。あたし、ちょっと由弦と話してくわー」

わざと軽い口調で。
ヤマトがこっちを見たのも分かってて、あたしは征一郎さんに小さく笑いかける。

「先に戻っててくれます?」

「ああ。ゆっくりでいいからな」

洋秋が黙って頷き、征一郎さんが口角をあげてみせた。



みんなの後ろ姿を見送り。由弦と二人きりになって、御影石に刻まれた『真下家』って達筆な文字をじっと見つめるあたし。

「・・・由弦。愛してる」

ポロリ。ほっぺたを涙が転がってく。

「あたしには、あんただけよ。あんた以上にあたしを愛せる男もいない。・・・こんなに惚れさせといて勝手に逝くなんて、ホント酷い男・・・」
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