銀光のbreath 【番外編 追加完了】
由弦はあったかかった。
忘れろって言いながら。優しく。優しくあたしを包み込んで。愛情に満ちあふれてた。

ああ。そっか。
あんたらしいよね、由弦。

だから会いに来たんだね。由弦にしか言えないことを言うために。

あたしはずっと。
同じところで藻掻きながら、もう取り返せないものの方に必死に手を伸ばして。

それじゃダメなんだって気持ちばっかり追い立てて、なんだか自分がバラバラになってた。
脚だけバタつかせて溺れないようにするのが精一杯だった。

腕を前に掻いて。かいて。掻かなきゃ。
前に進むハズなんかなかったのにね。

やっと。そうしなきゃダメだって、あたしが気が付いたから。
背中を押しに来たんでしょ。

いつまでも、自分だけで溺れてんな、って。
ちゃんと顔あげて。
あたしを助けようって、掴んで離さずに。ずっと引っ張ってくれようとしてた手を。



掴み返してやれ、って。
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