銀光のbreath 【番外編 追加完了】
 7時半ちょっと過ぎに由弦が家に迎えに来た。
 前まで車で来るとすれ違いが出来ずに面倒だから、一本向こうの広い通りに置いた車まで二人で歩いてく。

 街灯の明かりが夜の闇をところどころ照らす中、駐車禁止の標識の下に堂々と路駐してる黒のインプレッサ。
 助手席に乗り込んだところで、覆い被さるようにして由弦にキスされた。待ち兼ねたみたいにちょっとガッツリ。・・・あれからほんとにコイツは遠慮がない。
 シートに押し付けられ、身動き取れないのをいいことに散々されて。その度にこっちは脳ミソが熔かされかけて、どんどん無くなってく気がする。
 洋秋のコトを。切なく想ったりしなくなってる。・・・気がする。



 由弦は今日は黒のスーツにグレーのシャツ、紫のネクタイ。ルックスがまあまあだし、ヤクザオーラ全開にするような馬鹿でもないし。ぱっと見、組の若頭には見えない。
 ちなみに前は。ご飯を誘われたって、安里かチェーンの居酒屋だのが関の山だったのに。

「・・・あんたにイタリアンに誘われるとか、雪降るんじゃないの?」

 カップルや女性同士のグループ客が目に付く店内。白壁にこげ茶色の板目、チェックのテーブルクロスに、ちょっとレトロなテーブルと椅子。飾り棚にはワインやオリーブオイルのビンが飾ってあったり。気さくに楽しめそうな雰囲気のお店だ。

 白身魚のカルパッチョに手を伸ばしながら、ぼそっと言うと。

「瑠衣とは来たことねぇもんな」

 口角上げてなんかすっごいムカつく笑い方された。
 あたしとはって!

「由弦の女カンケイなんか興味ない」

 思いっきり睨め付けてやったのに、涼しい顔でノンアルのグラスビールを呷って見せる。
 あーもうっ。いちいちムカつくとか、どーにかなんないかな?!
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