銀光のbreath 【番外編 追加完了】
「・・・煙草買いに行ってくる。瑠衣、付き合うか?」

「あ、うん。行く」

 食後に珈琲でも、って鈴奈さんがキッチンに向かったところで洋秋が不意に。
 あたしはコートを、洋秋はフード付きジャンパーを羽織って外に出た。
 通り沿いのコンビニまでは歩いても10分とかからない。静かな夜の住宅街を二人で歩く。

「瑠衣。・・・・・・ありがとな」

 煙草に火を点け白い吐息を上へ逃して、洋秋が言った。

「おかげでアイツにやっと・・・旦那らしい事がしてやれる」

「あたしは別になんにもしてないよ?」

 とぼけて見せれば。
 大きな掌があたしの頭を柔らかに撫でた。

「お前達が一緒なら、鈴奈も遠慮しねぇだろうと思ったのさ。せめてウェディングドレスくらいは着させてやりたかったしな」

 ずっと。ここまで洋秋を支えてくれた大事なひとの為。 
 愛しさと想いがひしと伝わってくる。

「・・・鈴奈には親不孝させちまったのに、アイツは文句ひとつ言わなくてな。トモダチって呼べる奴も置いて来させて、俺は何もしてやれなかったが」
 
 見上げた横顔に、どこか苦そうな切なさが滲んで見えた。

「瑠衣や由弦が居てくれたからな・・・。鈴奈も掬われてたんじゃねぇかと思う。これからも頼むな」

 そう言って儚そうに笑う。

 お礼なんて。・・・そんなの当たり前だよ洋秋。
 だってダイスキなヒトの為に何かしたいって、あたしも同じだもん。
 大好きな人の、大事なヒトの為でも何でもするよ。

「・・・洋秋はあたしの大事なイトコだからね。鈴奈さんも大事なお姉さん。家族なんだから、言われるまでもないよ?」

 本心から。素直に。

 
 鈴奈さんの妊娠を由弦から聴くまでは。まだどっか、洋秋への未練を引き摺ってた。
あたしに対する愛情は、家族への親愛だって分かってても。どっか諦めきれてなかった。
 
 洋秋が好きだった。過去形。もう言い切れる。
 温泉にね、流してきちゃったから。鈴奈さんの言うとおり。

「洋秋」

「・・・ん?」 
 
 紫煙をくゆらせながら優しい眼差しが返る。 

「愛してる」

 あたしの告白を。一瞬、目を細めて。

「ああ・・・俺もだ」

 
 
 男と女にはなれなかった、それでも愛しい者へ。
 決別を込めて。

 誓ったのは、新たな絆。

 
< 40 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop