銀光のbreath 【番外編 追加完了】
 驚いたようにあたしを凝視したおばさんが、眼差しを翳らせて黙り込んだ。
 
 どう伝わったのか。
 あたしはただ。
 由弦にはちゃんと人を愛するココロも、痛みや優しさを感じるココロもある。極道って生き様を選んだだけで、誰とも変わらないってコトを。せめて受け止めて欲しいって思った。

 親からしてみれば。真っ当に生きられないロクでなしの息子にしか、見えてないかも知れない。
 あたしだって。洋秋達が本当のクズに成り下がったら。人間として見過ごせないって警察に売るかもしれない。
 キレイごとに聴こえるだろうけど、必要悪って割り切りが出来るか出来ないか。それだけの違い。正義と倫理だけで計れないモノだってこの世にはある。

 由弦の両親にあたしの気持ちを押し付けるつもりはないけど。こうして会ってくれるのは、どんなに細くなっててもまだ親子の糸が繋がってる証だって思ったから。
 閉ざしてる“壁”を開いてくれとは言わない。ただ。・・・・・・ただ。
 
 由弦が力強く手を握り返してくれた。
 この手があれば味方が一人もいなくたって怖くないんだ。
 
 
「・・・・・・時間を取らせて悪かった」

 静かに言って立ち上がった由弦に合わせ、あたしも。

「お邪魔しました。・・・話を聴いていただいて、ありがとうございました」

 口を噤んだまま、じっと考え込むようにその場を動かないおばさんに深くお辞儀をして部屋を出る。

 見送りもなく。これで良かったのかと複雑な心境に揺らされもして。
 あたし達は由弦の実家を後にしたのだった。


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