銀光のbreath 【番外編 追加完了】
8-1
「こっちにミルクで、オムツとかおしり拭きはこっち」
ちはるの着替え一式なんかも詰め込んだ旅行用のバッグを、洋秋ん家のリビングに置かせてもらう。
「さっき飲んだばっかりだし、うんちも普通だった。ヤマトが来たら、ちはるの面倒は任せちゃっていーから」
「すっかりちーちゃん専属の保父さんだねー、ヤマト君」
「毎日来てるからねぇ」
呆れたように言うあたしに鈴奈さんはコロコロと笑った。
出て来る前はけっこう愚図ってたのに、鈴奈さんに抱っこされてちはるは大人しい。・・・どーいう差別?
「ちはるー、イイ子にしててよー?」
小指を小っちゃい手に握らせて、バイバイするみたいに優しく揺らす。
髪を撫でほっぺにチュウ。愛しい娘。由弦の大事な大事な宝物。
「鈴奈さんほんとにゴメンね。なるべく早く帰るから」
申し訳なさそうに言うと。
「たまにはいいじゃない。今度レンを預かって洋クンとデートさせてくれれば、オアイコ!」
彼女は悪戯っぽく、あたしの後ろに立ってた洋秋を見やる。
「そうだね。そーしてよ洋秋!」
あたしも振り返って加勢すれば、やれやれって表情で口の端を緩めてた。
「・・・瑠衣。そろそろ出るぞ」
仕事モードで、黒の三つ揃いにえんじ色ののシャツ、黒のネクタイ。
そこに黒いコートを羽織ると、征一郎さんに劣らないくらい洋秋も風格が増す。
あたしも今日は首元にビジューをあしらった、黒いハイネックのチュニック風ワンピース。レギンスとブーツも黒で。
「うん。・・・行こっか」
マッシュショートの髪を右側だけ耳にかけ最後にもう一回、ちはるにキスを落としてバッグを手にする。
「じゃあ鈴奈さん、行って来るね!」
見送りに明るく笑顔を向けた。
背中で玄関ドアがゆっくりと閉まる音。先に出て通路に佇む洋秋と深く目が合う。
お互い言いたいことは多分わかってた。でも何も云わず歩き出す。
・・・そうだ。一年前のこんな頃だった。
洋秋と鈴奈さんに後押しされて、由弦と初めて一泊旅行に出かけたのは。
大雪にでもなんないかななんて。柄にもなく緊張して。
空も高く澄んでいいお天気だった。
今日も。あの日みたいにキレイに晴れてる。
泣きたくなるくらい、綺麗に。
ちはるの着替え一式なんかも詰め込んだ旅行用のバッグを、洋秋ん家のリビングに置かせてもらう。
「さっき飲んだばっかりだし、うんちも普通だった。ヤマトが来たら、ちはるの面倒は任せちゃっていーから」
「すっかりちーちゃん専属の保父さんだねー、ヤマト君」
「毎日来てるからねぇ」
呆れたように言うあたしに鈴奈さんはコロコロと笑った。
出て来る前はけっこう愚図ってたのに、鈴奈さんに抱っこされてちはるは大人しい。・・・どーいう差別?
「ちはるー、イイ子にしててよー?」
小指を小っちゃい手に握らせて、バイバイするみたいに優しく揺らす。
髪を撫でほっぺにチュウ。愛しい娘。由弦の大事な大事な宝物。
「鈴奈さんほんとにゴメンね。なるべく早く帰るから」
申し訳なさそうに言うと。
「たまにはいいじゃない。今度レンを預かって洋クンとデートさせてくれれば、オアイコ!」
彼女は悪戯っぽく、あたしの後ろに立ってた洋秋を見やる。
「そうだね。そーしてよ洋秋!」
あたしも振り返って加勢すれば、やれやれって表情で口の端を緩めてた。
「・・・瑠衣。そろそろ出るぞ」
仕事モードで、黒の三つ揃いにえんじ色ののシャツ、黒のネクタイ。
そこに黒いコートを羽織ると、征一郎さんに劣らないくらい洋秋も風格が増す。
あたしも今日は首元にビジューをあしらった、黒いハイネックのチュニック風ワンピース。レギンスとブーツも黒で。
「うん。・・・行こっか」
マッシュショートの髪を右側だけ耳にかけ最後にもう一回、ちはるにキスを落としてバッグを手にする。
「じゃあ鈴奈さん、行って来るね!」
見送りに明るく笑顔を向けた。
背中で玄関ドアがゆっくりと閉まる音。先に出て通路に佇む洋秋と深く目が合う。
お互い言いたいことは多分わかってた。でも何も云わず歩き出す。
・・・そうだ。一年前のこんな頃だった。
洋秋と鈴奈さんに後押しされて、由弦と初めて一泊旅行に出かけたのは。
大雪にでもなんないかななんて。柄にもなく緊張して。
空も高く澄んでいいお天気だった。
今日も。あの日みたいにキレイに晴れてる。
泣きたくなるくらい、綺麗に。