月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
その音は、やがて私に近づいてきた。

そして、聞こえる人の足音。


ん?人?


「大丈夫か?」

肩に触れる手の温もり。

私はすぐさま目を開けた。

「おい。生きているんだな。」

白い服装と黒い服装の男二人。


やった。

助かった。


「う……ん……」

私は声を振り絞った。

「しっかりしろ‼」

白い服装の男に抱き抱えられ、口許に硬い何かが当たった。

間もなくそこから水が流れ落ち、私の体の中に水分が入ってくる。


私は両腕でそれを持ち、中から出てくる水をゴクンゴクンと飲み干した。

「慌てるな。ゆっくりと飲め。」

そんな忠告も聞かずに、ありったけの水を体に入れようと必至だった。


「はあ……」

飲み干すだけ飲み干して、私は深呼吸を繰り返した。

「よかった。死んではいないようだ。」

「はい。」

二人の声を聞き、私は改めてその人達を見た。
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