月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「ハーキムさん。」

「ん?」

「今更なんですけど、宝石ってどんなモノなんですか?」

ハーキムさんは、目をぱちくり。

「そう言えば、話してなかったな。」

ハーキムさんは、火の中に薪を入れると、ゆっくりと口を開いた。


「宝石は少し大きめだ。厚みはそんなにないが、握りこぶしよりも少し小さめなのだ。湖から帰って来た人が言うには、中は深いエメラルドグリーンになっていて、同じような深い緑色をしている事から"妖精の心臓"とも言われている。」


深い緑色。

少し大きめ。


私の脳裏にあるモノがかすめる。

それは、社員旅行に行く前。

資料室で見たあの本から、落ちたペンダント。

そのペンダントのトップに飾ってある物が、今さっき教えて貰った、深い緑色で少し大きめの石なのだ。


「それって……」

私はスカートの中から、そのペンダントを取り出した。

「これの事ですか?」
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