月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
日本人と同じ褐色の肌。

濃い顔つき。

そこが砂漠だった事と、白黒の衣装が、この二人をアラブ人だと、私に教えてくれた。


「あの……ありがとうございます。」

私は水筒を持ちながら、頭を下げた。

「礼にはおよばん。何よりも生きててよかった。」

白い服装の男の人が言った。


整った顔の作り。

品のある振る舞い。

優しそうな笑顔。

どれも私の心を捉えて、離さない。


「どうした?」

「……いえ。」

俯くと、手を差し出された。

私は持っていた水筒を渡す。

白い服装の人は、それを黒い服装の人に渡すと、もう一度私に手を差し出した。

「立てるか?」

その手を握り、なんとか私は立ち上がった。


「そなた、名はなんと申す?」

「……紅葉です。」

「クレハか。良い名前だ。」

そんな事言われた事がなくて、恥ずかしくなった。


「クレハ。なぜ砂漠の中を歩いていた?」
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