月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「さあ?」

「分からぬのか?」

「はい。」

すると黒い服装の人が、腰にあった刀に、手をかけた。

「ひぃ!」

私は2、3歩後ろへ下がる。

「ハーキム。止めろ。」

「しかし!」

「よいのだ。」

白い服装の人に言われ、"ハーキム"と呼ばれた黒い服装の人は、刀から手を離した。


「クレハ、許せ。ハーキムは、俺の大事な友。俺を守ろうとしての行動なのだ。」

「はあ……」

白い服装の人の、瞳の奥が深くて、私は吸い込まれそうになった。


「俺の名前は、ジャラール。この先のオワシスまで行くのだ。クレハは?」

「いや、私は……」

そこで、ふと頭に引っかかることがあった。


ジャラール。

どこかで聞いた事がある名前。


「クレハ?」

「あっ、いや、その……全く行き先なんて決めていなくて……」

黒い服装のハーキムさんは、私を見ながら深いため息をついた。

「でしょうね。ターバンも巻かずに砂漠を歩くなんて。」
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