月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「紅葉、気づいてないかもしれないけど、眠りそうになる回数、前よりも増えた。旅行の前夜から例の夢を見ているんだったら、もう2日寝ていない事になる。人間の限界まできてるよ。」

眠っているのに、寝ていない。

それが確実に私の体を蝕んでいた。


「今は辛いけど、旅行が終わるまでだよ。頑張ろう。」

光清に手を引かれ、私は立ち上がる。

「行こう。ごめん、変な場所に連れて来た。」

「ううん。とっても綺麗な場所だよ。来てよかった。」

「そう。ならよかった。」

光清と二人で、また歩き出す。


金閣寺の前の沼は、普通に戻っている。

あれは、遠い異国からのメッセージ。

本当は伝えるべき。


でも私の体は限界に近い。

どちらを取ればいいか分からない。

その前に再び眠りについたら、私はどうなってしまうのか、それすらも分からない。


「ねえ、光清。全く寝れなくなった人って、どうなるのかな。」

光清は黙ったまま、私の手をギュウッと握った。
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