月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「ジャラールさんもハーキムさんも誤解している。しかもネシャートさんが助かる命は、他にある。それを伝えられる人は、私しかいないの。」

ときわはその話を聞いて、深いため息をつく。

「言ってる事は分かるけどさ。その為に自分が廃人になったらどうするの?」

「廃人?」

「息はしているけれど、他は何にもできない人。」


私はそんな人を想像して、息を飲む。

「ほらね。止めときな。」

ときわが、立ち上がった。

「それでもいい!」

私はときわの腕を掴んだ。


「私はどうなっても、私一人の問題だからいい。でもジャラールさん達は、一国の行く末の事なの。何十万、何百万の人の事なの。」

「要するに放っておけないって事ね。」

「うん。」

ときわはその場に座ると、頭を抱えた。


「そりゃあ私も、紅葉の事は応援したいんだけどさ。どのくらいまで許せるか、分からないんだよね。」

それを聞いて、何も言い返せない。
< 152 / 300 >

この作品をシェア

pagetop