月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「だ〜〜なんでタイミングよく目覚ましがなるかな。」

めったにお目にかかれないイケメンに、私はすっかり持っていかれていた。

「おはよう、紅葉。」

「おはよう……」

「何、あんた。折角の旅行の朝だって言うのに、不機嫌そうね。」

私をイケメンから引き離した張本人は、そんな事も露知らず、私に朝食を揃えてくれた。


「別に。頂きます。」

「あっそ。」

用意された朝食を食べながら、さっき見た夢を思い出した。


リアルに照りつける日射し。

死にそうになるくらいの、咽の渇き。

今も耳に残る二人の声。


本当にあれは、夢の中の出来事だったんだろうか。


「おはよう、姉ちゃん。」

「おはよう。」

弟が隣に座る。

「姉ちゃん、寝ぼけてんね。興奮して眠れなかったのか?」

「う……ん……」

弟の朝食を持ってきた母親と、弟が不思議そうに目を合わせる。
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