月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「あのさ、リアルな夢って見た事ある?」

「リアルな夢?」

弟の前に、お味噌汁の湯気だけが、ゆらゆらと揺らめく。

「姉ちゃん。いくら社員旅行が楽しみだって、行く前から旅行の夢は見ないぜ。」

「そうよ。ほらほら、今度は夢じゃなくて、本当の旅行に行って来なさい。」

なんとか朝食を掻き込んだ私の背中を、母親は落ち着かせるように、なで回す。

「うん……」


スーツに着替えるのと、荷物を持ってくる為に、2階に上がった。

「ふう……」

なんとかスーツに着替えた時だ。

ポケットに何か入っているのを感じた。

「何だろう。」

手を入れて、中に入っている物を取り出すと、あの宝石が付いているペンダントだった。


深い深い緑色。

そのまま見ていると、吸い込まれそうだ。


そう言えば、ジャラールさんの瞳も、吸い込まれそうな深い緑色をしていた。

アラブ人って、そうなのかな。

少なくても、ハーキムさんは、黒だったような。
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