月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「旅している時から?」

「ああ、そうだよ。クレハのクルクル変わる表情に、俺もハーキムもどれだけ元気を貰ったか分からない。」

そしてジャラールさんは、右手で涙を拭いてくれた。

「それに、もしかしたらクレハがこの世界に来たのは、必然的だったのかもしれない。」

「必然的?」

「来るべきして来た、と言う意味だよ。」

「へっ……」

私は難しい言葉を言われたお陰で、涙が止まった。


「本来なら宝石を持っていたのはハーキムで、それを宮殿に持ち帰るのは俺だと言う筋書きだったんだ。だが、途中で宝石は必要なくなった。ネシャートが病に臥せっている原因が、宝石ではなくもっと別な物だったからだ。」

「えっ‼そうなの?」

そんな理由で宝石が、必要なくなるの?

逆に必要ぽくない?


「宝石が必要ないならば、全く別な人物に渡した方が、争いは起きない。だからこそ、宮殿や一族には関係ないクレハが必要だったんだ。」
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