月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
それは何気ない日常から、始まった。


「社員旅行、京都だってよ。」

「うっそ〜、ださーい。海外じゃないの〜。」

朝礼が始まる前、同僚の加茂ときわと、源光清がこっそり教えてくれた。

「紅葉(クレハ)。どう思う?」

「どう思うって……会社が決めた事なんだから、仕方ないじゃない。」


そりゃあ私だって、海外に行きたかった。

でも決まってしまったものは、どうしようもない。



「はい。静かに。」

神崎部長が、私達に近づいて来た。

「三人共。お楽しみの旅行がもうすぐだね。」

部長はやたら、テンション高めだ。


「神崎部長。今回の社員旅行で、実家の旅館、使って貰えるみたいだよ。」

「どうりでね〜。」

椅子に反り返ったり、机に伏せたり、二人は自由だ。

「って言うか、光清もときわも、なんでそこまで部長の事知ってんの?」

グテグテしている割りには、二人とも細かいところを知っている。
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