月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「ジャ、ジャラールさん?」

「やはりキスした方が、よかったかな。」

一歩、また一歩、私に近づいてくる。

「わっ、わっわっわっ!」

ジャラールが一歩近づく度に、私が一歩下がる。


「安心しろ、嘘だ。」

ジャラールさんは、私のオデコをペチッと叩く。

「へっ?」

「俺はソファで寝る。」

ソファ……

私の頭の中に、さっき二人で話をした、ソファが浮かぶ。


いや。

いくらなんでも王子様を、ソファで寝かせるわけにはいかないって!


「いえ、ジャラールさん。私がソファで寝ます。」

「クレハが!?」

滅茶苦茶驚かれて、ジャラールさんがこちらを向く。

「だってまさか、王子様がソファで寝るなんて、絶対問題になりますよ。」

人が真剣に話してるのに、ジャラールさんはクスクス笑うばかり。

「何が可笑しいんですか?」

「いや。」

するとジャラールさんは、寝室のドアを閉めて、ベッドにいる私の横に座った。
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