月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「実は、少し前までの俺だったら、クレハの事抱けなくてもいいから、ベッドで寝ていた。」

「へっ………」


な、何を言い出すんだ、この王子様。


「ハーキムに訓練だって言われ、宮殿の周りの茂みで野宿した事もあった。もちろん警備上の問題で、1回につき1日だけ。宮殿の、しかもベッド以外の場所で寝るなんて、もっての他だった。」

「そう……ですよね。」

それ、気持ちが分かると言うより、正統な意見だと思います。


「でも今回の旅でよく分かった。自分はなんて、世間知らずだったのだろうと。」

いや、それでいいんだと思います。

「それにもう一つ、分かった事がある。」

「何ですか?」

「本当に欲しいって思ったモノは、時間をかけてゆっくりと自分のモノにした方がいいと言う事だ。」

「はあ。」


どう言う事?

一番好きなモノは、一番最後に食べた方がいいって事?


「じゃ、クレハ。おやすみ。」

「おやすみなさい。」



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