月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「だからこそ、サマド王の元へ行け。本当の父親を知る事は、自分を知る事と一緒だ。」

「父上……」

王様は、ジャラールさんの涙を、指で拭った。

「そしてここからが、一番大事だ。ジャラール、ネシャート、よく聞け。」

ジャラールさんとネシャートさんは、互いに顔を合わせた。

「私はサマド王に、ジャラールとネシャートの婚姻を、申し込もうと思う。」

「えっ?」

「父上!」


ゴーン……

頭に釣り鐘を打ち付けられたように、頭が痛い。

ジャラールさんとネシャートさんは、さぞかしお喜びかと思いますけど、私にとっちゃあ、失恋決定。


「サマド王の元へ行き、数年後。今度はネシャートの相手としてここへ戻って来い。そのままずっと、ネシャートと一緒に、この国を支えて行くのだ。」

「父上。」

ようやく二人のわだかまりが溶けたように、ジャラールさんと王様は、抱き締め合った。

そして二人が離れると、そこには泣き崩れるネシャートさんの姿が。
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