月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
胸が苦しい。

理不尽。

それがまかり通る世界。

でも唯一の救いは、お父さんがジャラールさんを殺さなかった事。




ー 愛した人の子供 ー





と言う理由で。


「その後は?ジャラールさんは、妹さんが一人いるって言ってたけど……」

それを言ったら、ハーキムさんは、口を閉ざしてしまった。

「ハーキムさん?」

「……ジャラール様は、妹君をなんと仰っていた?」

「えっ?ああ……確か母親が違うって。」

「そうか……」

そしてまた沈黙が流れる。

隣でパチパチ言っている焚き火が、その沈黙を軽くしてくれた。


「うまくいかなかったの?ジャラールさんのお父さんと、お母さん。」

私は側にあった小枝で、焚き火の中にある燃えている木を動かした。

「母親が違うって事は、他の奥さんもいるって事でしょう?」

動かした木は、火から少しだけ離れて、点いていた火も少しずつ小さくなっていった。
< 47 / 300 >

この作品をシェア

pagetop