月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「教えて。日本でも昔は何人も奥さんがいるのが、当たり前だったし。それくらいだったら、大丈夫。」

ハーキムさんは、そっとこちらを見た。

私もそっと見つめ返す。


「……その後、しばらく王とお妃様は、会わずにいた。王は、愛しているからこそ王子の本当の父親が、自分では無いことに苦しんでいた。時間が解決してくれる。周りの皆はそう思った。」

「でも、実際はそうじゃなかった。」

「そうだ。会わずにいる間、お妃様は王の寵愛を失ったと絶望したのだ。そしてお妃様は、幼い王子を残して自ら命を絶ってしまった。」


言葉が出てこなかった。

せっかくこの世に生まれたって言うのに、お父さんとは血が繋がっていない上に、お母さんは物心つく前に亡くなっているなんて。


「お妃様を失い、王は何も手に付かない程、悲しみにくれた。だがその隙をついて攻め入ってくる国もある。近臣は悩んだ末に、一人の女性を連れて来た。」
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