月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「本気ではないとは、どういう事だ。」

私とハーキムさんが、目を合わせる。

「それは……ただ単に憧れって言うか、王子様に出会えて、舞い上がっていると言うか……」

「要するに、妃の座を狙っているわけではないのだな。」

「き、妃?」


それって、ジャラールさんと結婚するって事?


「うわっっ!」

恥ずかしくて、顔を両手で隠した。

「どうした?」

「い、いや‼ちょっと妄想が過ぎただけ。」


ひゃあ〜〜

勘弁してよ、そんなに恋愛経験もないって言うのに。


「疑って悪かった。」

その時、私は初めてハーキムさんの険しい顔以外の表情を見た。

「ハーキムさん……」

「あの容姿と財産だ。己の私利私欲で手に入れたがる者は、たくさんいる。」

「はあ……」

だからと言って、私が手に入れても、なんら変わらないし、最悪、その有り難みもわからないと思うよ。

私はハーキムさんを他所に、自分の田舎草さを呪った。
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