月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「ああ……知り合いにアラビア語が分かる人がいてね。その人に頼んで訳してもらったんだ。」

「ははは……知り合いの人、ね。」


そうか。

そんな手段があったのか。

光清の家の、スケールの大きさに驚きながら、私は本の中を見た。


砂の城を後にした旅人二人は、砂の嵐に遭遇する。

そして、それに視界を遮られている間に、一人が砂の中に引きずり込まれる。

もう片方が刀を砂に立て、なんとか仲間を助け出そうとするが、自分もだんだん、砂に飲み込まれていく。


「これって……」

ただ単に、物語の一部だと思えば、ハラハラドキドキもしただろう。

でもなまじ、その挿し絵がジャラールさんとハーキムさんの姿に重なって、ページをめくる手が震える。


そして、ページをめくった途端、誰かがロープを投げて二人を救う。

こうして二人は、助かったようだ。


「よかった。助かって。」

「えっ?」

「あっ、ううん。こっちの事。」
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