月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
私は誤魔化しながら、ちらっと最後の方に書かれている挿し絵を見た。

そこには、あの日。

資料室で見た、王子様とお姫様のイラスト。

何一つ、変わっていない。


この王子様がジャラールさんならば、お姫様は誰なんだろう。

もしこのお姫様がネシャートさんだったら、この王子様は、ジャラールさん以外の人なんだろうか。

二人は兄妹で、従兄妹。

そんな関係を、お伽噺はハッピーエンドにするだろうか。

疑問はつきない。

つきないのに、また眠くなってくる。

「紅葉?」

光清が私の肩を揺らす。

「大丈夫か?紅葉。」

体が揺れるけれど、瞼が重い。


「光清。私、また寝る。」

「え?あっ、ああ。」

光清の返事を最後に、私はまたウトウトし始める。


あれだけ眠れなかったのに。

この本を読んだ途端に、眠くなるなんて。




"クレハ!"

どこかで誰かに、私は呼ばれている気がした。
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