月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「頑張って!駱駝さん!!」

すると駱駝は、少しずつ穴とは反対方向へ、歩き出す。

「その調子!」

駱駝の体を擦ってから、ハーキムさんのいる場所へ行くと、ハーキムさんがジャラールさんの腕を掴んでいる時だった。

少しずつ、二人の体が上がってくる。

「もう少し!」

そんな掛け声をずっとかけ続け、二人はようやく穴の外に出る事ができた。

「ジャラールさん!ハーキムさん!」

二人に近づくと、ものすごく息が上がっていた。

「よかった……二人とも助かって。」

安心したら、なんだか涙が出てきた。


「クレハ、ありがとう。」

ジャラールさんが、私を抱き締めてくれた。

「ジャラールさん……」

「クレハは命の恩人だ。心から感謝する。」

ジャラールさんの心臓の音が、聞こえてくる。

なんて居心地のいい音なんだろう。

"命の恩人"


この心臓の鼓動が、止まらなくてよかった。
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