月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
いつしかジャラールさんの心臓の音と、私の心臓の音が重なる。


どうしよう……

私、ジャラールさんの事……


「クレハ。」

ハーキムさんの声に、私はジャラールさんから、体を離した。

「俺からも礼を言う。ありがとう。」

「いえ、ハーキムさんも助かってよかった。」

そして私は、二人を振り切るかのように、ロープを片付け始めた。

すると反対側からハーキムさんが、ロープを巻き取ってくれる。


「しかし、ロープを駱駝に巻き付けるとは、よく考え付いたものだ。」

「ははは……ありがとうございます。」

確かにそうだよね。

ロープを使う事は本に書いてあったけれど、それを駱駝に巻き付けるなんて事は、書いてなかった。

しかも"誰か"って、私の名前、出てなかったし。


う〜ん。

何でだろう。


「さあ、急ごう。」

ジャラールさんは、いつの間にか駱駝に乗っていた。
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