月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
ジャラールさんは、ハーキムさんと私が駱駝に乗るのを見て、すぐに走り出した。

「ジャラールさん、余程急いでいるんだね。」

「ああ。」

ハーキムさんも、ジャラールさんに必死についていく。

「ジャラールさん。ネシャートさんの事、好きなんだね。」

「……だから言っただろう。ジャラール様には、必要以上に近づくなと。」

なんだか、目頭が熱くなる。

「ハーキムさんは、知っていたの?」


私がジャラールさんの事、好きになるかもしれないって。


「お前だけじゃない。ジャラール様に近づいた女は、大抵心を奪われる。あの容姿に慈悲の心。強さも兼ね備えているからな。」

「そうなんだ。みんな、振られちゃうの?」

「そんな事はない。中には、想いを遂げる者もいた。だが反って精神を病むようで、いつしかジャラール様の側を離れてしまう。」


胸がきしむ。

心が痛い。

側にいるからこそ、分かる人がいる。
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