月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
光清が私を手招きしながら連れて行ってくれた場所。

そこは山に付き出した、正に「清水の舞台」だった。

しかも紅葉真っ盛りで、周りは一面赤く染まっている。

「綺麗……」

「そうだろ?この景色を、紅葉と一緒に見たかったんだ。」



言葉もいらない。

ただただ、その景色を感じる。

その瞬間を、一緒に感じてくれる人がいる。

それは………


私はそっと、光清を見た。

涙がスーっと零れる。


「また泣いてるの?俺、なんかした?」

私は涙を拭いながら、首を振る。

しっかりしなきゃ。

これで何回目なの?

光清に心配かけさせるのは。


「なんか感動しちゃって。」

「そうなの?ごめん。俺、デリカシー無くて。」

なんか光清の言葉に、笑いが込み上げた。

「えっ?」

「さっきも同じような事、言ってたよ。」


その時、私は思った。

光清はいい人だって。
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