月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
雑踏の中で、静かに落ち葉が枚散る。

それがだんだん、砂漠の廃れた宮殿で見た、月に見えてきた。


ああ、砂漠へ帰りたい。


「紅葉……」

隣で光清が、私の手を握る。

「えっ?あのっ、手、手!」

「だって。こうしてないと、紅葉がどこかに行ってしまいそうだから。」

真剣に答える光清に、胸がきゅうっと締め付けられる。


光清の気持ち、すごく分かる。

でも今の私には、答えられない。

私の心の中には、ジャラールさんがいるから。


「な〜んちゃって。ホント、俺って懲りないよね。こうしても、紅葉を困らせるだけだって言うのにね。」

光清は、パッと手を離した。

「でも、これだけは知ってて欲しいんだ。俺、決して紅葉を困らせたいわけじゃなくて、力になりたいんだ。守りたいんだ。その……た、た、大切な……」

「うん。分かってる。」

私と光清は、顔を合わせた。

「光清は、ここぞと言う時に、頼りになるもん。」
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