月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「紅葉……」

光清が、一歩ずつ近づいてくる。

「それをよこせ。」

「嫌よ!」

「何故だ?ただの本なら、捨てたっていいだろう‼」

光清の叫び声を聞いて、神崎部長が部屋に入って来た。


「あなた達、何をしてるの!?」

女子社員に迫る男子社員。

当然、神崎部長は私の元へ駆け寄る。

「大丈夫?宮津さん。」

「……はい。」

私は本をぎゅうっと、抱き締めた。


それを見て、光清は部屋を飛び出して行く。

「あっ、こら!源君!待ちなさい!」

続いて神崎部長も、部屋から出ていく。


部屋に一人になった私は、一つの仮説を立てた。

私は眠ると、この本の世界へトリップしている?


だから夢の中で終わらず、ジャラールさんやハーキムさんは、現実的に思えるのだ。

私は急いで本を開いた。

だけどアラビア語で、全く内容が分からない。

「誰か教えて。今、この中はどうなっているの?」


描かれているイラストには、ただ綺麗な月が浮かんでいるだけだった。
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