月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「ありゃあ〜光清、バカだね。紅葉の前で。」

ときわは気を使ってくれたけど、光清が女の子と一緒いるのは当たり前過ぎて、驚きもしない。

「紅葉はなんとも思わないの?」

「うん。別に。」

「ありゃ。光清も可哀想。」

「何で?」

「だってあれ、紅葉に見せつけてるだけじゃん。焼きもち妬いて貰いたいんだよ。」

私は軽くため息。

言っている事は分かるけれど、実際嫉妬なんてないし。

そこで改めて、光清は友達なんだと分かる。


「難しいね、人の気持ちって。」

ときわだけが、面白そうにスリッパをペタペタと、音を立てながら歩いている。

一方の私は、足取りが重くスリッパを引きずって歩く。


あんなに心配してくれた光清が、遠くに行ってしまう。

ジャラールさん達にも、いつまで会えるか分からない。

一人で寂しい気持ちを持て余しながら、私はときわより早く布団に入った。
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